平成25年9月26日
県政ながの 宮本衡司

 

 

Q 9月15・16日と日本列島を襲った台風18号は全国各地に大きな爪あとを残し、県内各所でも大変な被害を受けた。
この場をお借りし、被害に遭われた皆様にお見舞いを申し上げる。
栄村においては、長野県北部地震の際に土砂崩れを起こした中条川に土石流が発生。下流域住民が避難するという事態になり、栄村森林組合の事務所は、1階部分が流れ出た土砂で大きな被害をうけた。しかし、人的被害もなくこの程度で収まったのは、ひとえに建設途中の治山・砂防工事の効果によるものと改めて感謝している。
現場は、2年半前の震災の再来かと思うほどの惨状で、知事はじめ多くの皆様方のお力添えで、復旧工事完成まであと一息というところまで来ていただけに残念でならない。
今後「復旧工事の復旧」にむけ、再度関係各位の一層のご支援をお願いするものである。

◎  野生鳥獣被害対策について

Q 県内の平成24年度農林業の被害額は、約12億6千500万円。
この内、「シカ」によるものが4億4千400万円、「イノシシ」が1億3千200万円、そして「サル」が1億2千800万円となっている。
野生鳥獣は非常に賢く、野菜や果物の完熟した食べごろを狙ってやって来る。イノシシの親は稲わらを倒して体をこすり付け、子どもは実を食べ、襲われた田んぼは、刈取りが不可能な状態になる。
ここ百年は「人」が野生鳥獣を山に追いやったり、絶滅させたり、という時代であったが、出来るものであれば、野生鳥獣と人との適当な棲み分けが好ましいと思う。県においては野生鳥獣の保護や個体数の管理についてどのように考えておられるのか。


A(林務部長) 県では「鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律」に基づき、ニホンジカ・イノシシなど農林業被害が顕著な5つの獣類について特定鳥獣保護管理計画を策定し、保護と管理を進めている。これらの計画では、いずれの種類についても、野生鳥獣の地域ごとの個体群を健全な状態で維持しながら、人身被害の回避や農林業被害の軽減を図っていくことを目標にしている。それぞれの野生鳥獣の生息状況や、生態の特性等にあわせて適切な保護を行いつつ、個体数管理のための捕獲や、被害の軽減を優先した加害個体の捕獲を進めることが重要と考えている。

適当な棲み分けにより共存を図るということは理想的ではあるが、現状を見るとこのような呑気なことを言っている場合ではない。
林務部の資料によると、平成24年度は対前年比全県で89.2%と減少しているが、北信地方事務所管内では102.0%と増加している。かろうじて、この現状を支えているのは、猟友会員の並々ならぬ努力をはじめ、地域の皆さんの協力によるものに他ならない。県においてはこれをどのように考え、更なる野生鳥獣の被害減少のためにどのような方策を考えておられるのか。


A(林務部長) 野生鳥獣による農林業被害が、平成19年度以降、5年連続して減少していることは、防護柵等の防除対策を進めた被害地域の皆さんのご尽力と、ニホンジカの捕獲を大きく進めた猟友会の皆さんの努力の成果と考えている。しかし、県全体の被害額は12億円を超え、被害が増加している地域もあることから、各地方事務所に設置している「野生鳥獣被害対策チーム」を活用し、地域のみなさんや猟友会の皆さんの協力による集落ぐるみの防護柵設置等の防除や、集落等捕獲隊の効率的な捕獲が一層進むよう、体制の強化に取組んでいく。

電気柵の設置延長は数十メートルから数キロにも及び、特に豪雪地帯では、秋には取り外し、春にはまた設置するという労力、また、ショートを防ぐための柵の周りの草刈り、落ち葉や倒木の除去等、かなりの手間がかかる。更に、設置したところの被害はなくなるが、次はその隣が被害に遭い、ご近所との人間関係が悪くなるという笑えない話もある。やはり狩猟による捕獲にかなりの部分を頼らざるを得ないのではないか。
北信地方事務所管内の狩猟免許所持者数は、今年の6月現在で221名。年齢構成は、60歳代が85名で最も多く、40歳代と50歳代を合わせると80名であり、60歳代以上が半数を占めている。このような実態を見るに、あと10年後が実に心配である。
県においては「効果はあるものの設置や維持に手間のかかる電気柵」、「減少と高齢化が一層進むことが予想される狩猟免許所持者」という状況にどのように対応されるおつもりか、電気柵については農政部長、狩猟免許については林務部長に伺いたい。


A(農政部長) 侵入防止柵として導入されている電気柵については、維持管理労力の確保が難しくなっている地区が出てきている状況は承知している。近年、野生鳥獣が住宅地に出没し、住民生活にも影響を及ぼしている松本市中山地区や須坂市仁礼地区などでは、農業者以外の地域住民も参加する協議会や委員会を立ち上げており、定期的に柵の設置や見回り、草刈等の維持管理を地区ぐるみで行い、被害対策の効果を上げている。
県としては、豪雪地帯の電気柵の維持管理についても、このような取り組みを行っていただくことが重要と考えており、各地域の野生鳥獣被害対策チームが市町村と連携し、集落内の多くの住民の皆様の合意形成ができるように、電気柵の管理作業が円滑に行われるよう助言・指導を実施していく。
(林務部長) 県では狩猟免許取得に向けた普及啓発、免許試験回数の増、事前講習会の開催等のほか、新規猟銃の所持許可を取得する場合には1人あたり25,000円相当の支援を行い、新規の免許取得者を確保しているが、免許所持者全体では依然として減少・高齢化が続いている。
しかし、将来に向けて、鳥獣捕獲の担い手の確保は、極めて重要な課題。射撃場の整備への支援体制、集落ぐるみの捕獲体制づくりによるワナ免許取得の促進、狩猟に関心を持つ若者への普及啓発と参入意欲のある人への支援の充実等、様々な観点から新たな担い手の確保に努めていく。

Q 飯山市外様地区において去る7月15日に「集落捕獲隊」という組織が発足した。外様地区の住民が同地区に住む猟友会員の方に、「せっかく作った農作物が収穫の時期になると動物に食べられてしまう。私が資金を出すので、あなたが「箱わな」を購入し、私の畑に設置してほしい。」との話を寄せられたのが捕獲隊設置の発端であったそうだ。
このように、「箱わな」を畑の持ち主が購入し、自分の畑に設置した「わな」を見回り、かかっていたら猟友会員に連絡をする。この方式であれば、猟友会員が多くの「箱わな」を準備する必要もなく、毎日の見回りと言う負担の軽減にもなる。さらに、地域ぐるみの取り組みとする。つまり多くの住民参加での野生鳥獣の駆除となる。という、なかなかよく考えられた仕組みではないかと思う。
集落捕獲隊は、狩猟免許を持つ猟友会員が「わな」の設置・撤去などを行い、自治体が実施した講習会を受講した者が補助者として毎日の「わな」見回りなどを行うことで、捕獲効率を上げようとの趣旨で、平成24年度に国の制度改正を受けて制度化されたもので、北信地方事務所管内でも既に捕獲隊を設置している。因みに、同捕獲隊では発足以降ハクビシン1匹、タヌキ4匹そしてアナグマ6匹の成果が早くもあった。
大型獣には難しいことと思うが、ハクビシン等による被害防止のためには集落捕獲隊は非常に効果的で、かつ持続が比較的可能なシステムであることから、県内において隊の結成を一層強力に推進すべきで、活動を財政的に支えるための新たな補助制度も検討すべきと考えるが、如何か。


A(林務部長) 集落捕獲隊は、猟友会員等の捕獲者と集落の皆さんが一体となって捕獲を進める取り組みで、タヌキ、ハクビシンからニホンジカ、イノシシまで、様々な獣の捕獲や防除に効果的な取り組みであると考えている。集落捕獲隊は、現在、19市町村の34集落に設置され、平成24年度には、1,000頭以上の有害鳥獣を捕獲している。県では「集落ぐるみの捕獲実践事業」をはじめ、様々な事業を活用して集落捕獲隊の活動に対する支援を行っている。今後、野生鳥獣被害対策を進める上で、集落ぐるみの捕獲が益々重要となることから、新たな集落捕獲隊が編成されるよう、「野生鳥獣被害対策チーム」による取り組みを進めるとともに、集落捕獲隊の活動への更なる支援を検討していく。

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◎ 第67回全国植樹祭について

Q 平成28年に第67回全国植樹祭が52年ぶりに長野県で開催されることが、国土緑化推進機構理事会において決定を頂き、誠に嬉しく思っている。9月12日には、知事を会長に、議会や行政、さらには林業、経済、観光、教育など、さまざまな民間の関係団体からなる「第67回全国植樹祭長野県実行委員会」が設立され、順調に準備が進んでいると聞いている。
この植樹祭そのものは1日だけの行事だが、森林についての県民意識を高める絶好の機会であり、その日だけで終わらせるものであってはならないと考える。また、開催地についても、本県は広く、開催場所によっては参加が困難な方々も出てしまう。それでは県民総参加の実現も、掛け声倒れになりかねない。この植樹祭を、一過性とせず、県民総参加を図るために、どの様なものとするのか。また、開催地はどの様な観点から選定し、いつごろ決まるのか。


A(林務部長) 全国植樹祭は、長野県の森林・林業をはじめ、様々な魅力を全国に発信するとともに、県民の主体的な参加の下での森林づくりを一層進める絶好の機会である。具体的には、来春から、全国植樹祭や地域の緑化活動に活用できる苗木を、学校や企業などで育てる取り組みや、県民を対象とした森林教室など、プレイベントとして県下各地で緑化運動に対する理解を深める活動を行い、県民参加の気運を盛り上げて、植樹祭の開催を迎えたい。また、平成28年の植樹祭以降も、植樹祭の理念が引き継がれることを常に念頭において、緑の少年団への活動支援や様々な取り組みを行い、一過性のイベントで終わらないようにと考えている。
開催地については、全国植樹祭の中心行事である式典会場については、長野県らしさを全国にPRできる会場であること、皇室行事を行う上でふさわしい場所であること、参加者の交通や宿泊の利便性などを考慮しながら、第67回全国植樹祭長野県実行委員会に設置した基本構想検討会により、今後、基本構想の一環として候補地が選定され、実行委員会で承認された後、県と共催者である国土緑化推進機構との協議を経て、平成26年2月頃までには決定される予定である。

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◎  林業振興について

Q 去る8月29日、オーストリア大使館商務部と長野県の主催による「オーストリア森林・林業フォーラムin長野」が開催され、県内外から300人を超える参加があった。
オーストリアは、内にヨーロッパアルプスを抱え、私有林が8割を占め、その所有者の多くが小規模の農家林家であり、林業離れが懸念されている点や、樹種構成は針葉樹が6割である点、そして、地形が急峻であるなど、林業の分野においても長野県と類似している。このような中で、オーストリアにおいては、林業・木材産業は基幹産業のひとつとなっており、その特徴としては、小口所有者が多いものの、森林連合などによる集約化が進み、インフラ整備への集中的な投資により路網密度が高く、機械化が進み素材生産コストが低く抑えられ、さらに、林業のシステムに精通し、専門知識をもったフォレスターが養成され活躍していることなどが挙げられる。先進的なオーストリアの林業経営は、これからの長野県の模範となるべきものとの思いを強くし、引き続き連携し、学ぶべきを学んでいくことが重要である。
さて、本県でも、育林の時代から活用の時代への転換期を迎え、北信州森林組合では、GPSを活用して森林の境界明確化を図り、所有者の同意のもと、経営計画を作成し、作業道を開設しながら間伐と間伐材の効率的な搬出を進めている。しあわせ信州創造プランでは、「県産材を効率的、安定的に供給する基盤づくりによって、充実した森林資源を有効に活用することにより、地域を支え、持続的に発展する競争力の高い林業・木材産業の構築をめざす」こととしている。信州F・POWERプロジェクトなど大いにプラスになる事業も進むなか、森林県長野をこれから林業県として発展させるために、必要不可欠な路網整備や機械化などの基盤づくりと林業の担い手の育成にどのように取り組まれるのか。


A(林務部長) しあわせ信州創造プランでは、平成29年度の達成目標として、素材生産量を現在のほぼ倍の610,000㎥にすることを掲げている。このため、基盤整備の計画として、平成29年度までの累計で、林業経営団地の設定目標を約111,000haに、林内路網延長を約14,200㎞に、高性能林業機械の稼動台数を約340台にすることとし、関係団体や市町村と連携し、目標の達成に努めていく。
また、担い手育成については、森林経営計画を作成する森林施業プランナーや、木材生産に携るフォレストウォーカーなど林業の技術者・技能者の育成を加速化させていく。これに加え、地域林業をけん引する人材として、今年度新たに、林業を総合的な視野で指揮することのできる「信州フォレストコンダクター」の育成に着手し、今後3年間で概ね30人の育成を目指していく。

Q オーストリアでは、建築材のみならず様々な熱源に、徹底して自国の木材が使われており、内陸国のため、ロシアからのパイプラインや中東からの石油等々には不安定要素があり、自国の森林資源を使い切ることで、経済効果を生みだしている取組みは大変示唆に富んでいる。
一方、わが国においては、半世紀にわたる非木造政策が展開され、森林が8割という県内でも、非木造施設、非木造製品が至る所に溢れている状況である。これを大きく転換したのが、平成22年10月に施行された「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」である。県では、この法律を踏まえ、いち早く方針を策定するとともに、全ての市町村においても県産材利用方針の策定をいただいたようだが、この半世紀で奪われた様々な分野において、県産材の利用を一層推進し、信州の木の文化を再生すべきと考える。
林務部では、県産材の利用に向け、様々な取組を始めていると聞く。需要拡大というと、その多くを占める住宅分野に目を奪われがちだが、それ以外の身近な生活の中で思いつくこともあると思う。県産材利用推進に関する考え、現在の取組み状況について伺いたい。


A(林務部長) 県産材は、その活用を通じて地域に経済効果を生むと共に、温もりある暮らしを提供し、二酸化炭素の固定を通じて温暖化対策にも貢献するなど多くの効用があるので、様々な場面で利用が進むよう取り組んで行く。現在の取り組み状況は、森林税を活用した「信州の木活用モデル地域支援事業」で、地域の方々が取り組む市街地の木質化や薪の生産拠点の整備等に対して支援している。また、「信州の木先進的利用加速化事業」を活用し、意欲ある事業体の皆さんとともに、鉄道車両の内装の木質化や、歩道等の境界ブロックの木質化、駅前等での工事用仮囲いの県産材利用等、多くの県民の皆さんの目に付く場面において、県産材利用を進めている。

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◎ 長野県林業公社について

Q 長野県林業公社は、昭和41年度に設立以来、森林所有者自らが施業出来ない森林を所有者に代わって造成してきている。私の地元を見ても、公社有林は立派な森林に育てられており、林業公社は今後も必要な組織であると考える。
森林経営は長期にわたり、森林から木材を生産できるまでは、お金と技術を掛けて整備する必要があり、今までに借入れた森林の育成経費で公社が多額の債務を抱えていることは周知のとおり。このため、これまで何度も林業公社の在り方の検討がなされ、公社は廃止と存続の間を揺れ動き、落ち着かない経営を強いられている状況だ。昨年の外郭団体等検討委員会でも決着できなかったことから、その報告に基づき、本年度は「林業公社経営専門委員会」を立ち上げて、現在、検討中となっている。
先日の新聞報道によると専門委員会は「公社存続」の方向とのことだが、この専門委員会の検討状況は今どのようになっているのか、「存続」、「廃止」を判断するポイントはどうなのか伺いたい。


A(林務部長) 「林業公社経営専門委員会」は、他県の状況を調査し、存廃のメリット・デメリットを踏まえて、本県の林業公社の経営の方向性を検討するため、本年4月に設置した。専門委員会においては、まず公社の廃止・存続の方針を既に決定している7県の詳細な調査を実施。加えて、本県独自に県と公社の長期収支等を合算した連結収支等を用いて、公社を廃止して県営林とした場合と存続した場合の県民負担を金額で比較することや、森林の適正管理を継続するための組織のあり方などにも踏み込んで検討している。
公社の今後の方向性を判断するためには、県と公社を連結した収支等の比較、今後の経営改善の有効性、分収林を長期にわたってきめ細かく管理できる組織体制等が重要であり、総合的な判断として存続すべきとの議論がなされているところ。今後、県としては専門員会の最終報告を踏まえ、判断していく。

本県では、県独自の「山の日」制定や、全国植樹祭の開催等、山や森林・林業振興に関する気運が従来になく高まっている。
秋田県では、あるRC造の県立の施設整備案が議会に上程されたところ、その補正予算案に対し県議会総務企画委員会にて、「なぜ県産材を使った木造建築にしないのか」と予算案を県側に差し戻し、木造に変更したものを再提出させこれを可決したという話を聞いた。
本県においても県有施設や県が補助する施設を整備する場合には、木造化や県産材の利用を進めるよう、より強く、より積極的に方針を打ち出して頂くよう、要望して質問を終わる。

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