信州は最北端、飯山市・下水内郡栄村選挙区選出 宮本衡司です。
県政ながのを代表して質問を致します。

代表質問も最後になりました。私が当初予定しておりました質問項目は、ほぼ全て他会派の代表がなされましたので、できるだけ重複を避けました結果、限りなく一般質問に近い代表質問になりますが、あらかじめご理解くださるようお願い申し上げます。

「何事の おわしますかは知らねども かたじけなさに涙こぼるる」
これは平安末期から鎌倉時代初期にかけての、僧侶・歌人であった西行法師が、諸国を巡る漂泊の旅に出かけた際、伊勢神宮一の鳥居の前で詠んだ歌とされており、古来よりの日本人(にっぽんじん)の持つ世界観・宗教観が正にここに示されています。

 

◎ 第67回全国植樹祭について

Q 知事は、新たな5か年計画の下で、大切に維持すべきものはしっかりと守り、時代の変化に即した新しい視点からの政策により時代を切り開く決意を、20年に1度の大祭、1300年前より続き、本年行われる伊勢神宮の第62回式年遷宮を引用し説明されました。知事も述べられているとおり、宝永6年(西暦1709年)の第47回式年遷宮から尾張藩の領地であった木曽の御杣山(みそまやま)から木材が調達されるようになり、長野県も式年遷宮祭に大いに寄与をいたしております。

いにしえより日本人(にっぽんじん)は八百万(やおよろず)の森羅万象(しんらばんしょう)に神を見出し、自然に対し畏敬の念を持つなど、自然を敬い大切にし、山と水、森と岩といったものの存在に神秘を感じ、常に自然と共に生きてきました。
日本人(にっぽんじん)が持ち続けてきた、この感性は未来永劫受け伝え、そして守り育てていくべきものと考えます。

さて、常に若々しく瑞々しくという「常若(とこわか)」の精神は非常に大切で、身近にある森林も一定の期間が経過したものは伐採のうえ活用し、その跡にはきちんと植林を行うというサイクルが復活してほしいものです。

昭和20年、30年代は、荒廃した国土も全国各地にあり、その復興は大きな課題でありました。そんな中、本県においても当時県の指導で植林されたカラマツが多く存在し、あるものはロマンチックな情景を作り、あるものは国民的歌謡の題材となっております。このカラマツもそろそろ伐採する頃かと思いますが、有効な活用方法を推進してほしいものと思っております。

余談はさておき、このような時代背景を受け、荒廃した国土の復興を願い「荒れた国土に緑の晴れ着を」をスローガンに昭和25年の山梨県での開催を皮切りに、毎年春に全国植樹祭が行われるようになりました。

全国植樹祭は、森林や緑への国民的理解を深めるため、天皇皇后両陛下のご臨席を賜り開催している、国土緑化運動の中心的な行事であることは言うまでもありません。

本県においても、昭和39年に第15回全国植樹祭を茅野市で開催し、昭和天皇皇后両陛下のご臨席を賜り、県内外から約1万5千人が参加して盛大に開催され、現在もその森林は大切に育てられているとお聞きいたしております。

そして、平成28年に「第67回全国植樹祭」が52年ぶりに長野県で開催されることが、国土緑化推進機構理事会において内定をいただいていることを非常に嬉しく思っている一人であります。森林づくりや緑化推進という県民一人ひとりの意識の向上が、全国植樹祭の開催機運を盛り上げ、全国有数の森林県であり、また林業県を目指している本県を全国に発信する絶好の機会になるものと考えております。

5か年計画においても、農林業の基盤強化と高付加価値化の推進、豊かな農村風景を活かした世界水準の山岳高原観光地づくり、そして水源保全対策等が述べられております。この目標達成のためにも、森林づくりに熱意を持って取り組んでほしいものと思います。また、森は多様な生物を育むのみならず、春の森は山菜の宝庫となり、夏には緑滴(みどりしたた)り、秋には錦なす風景となり、冬には所によってはスノートレッキングの好適地となります。

私の友人に「男の最高の贅沢は薪ストーブのパチパチという音と、湯気たてるやかんの音の聞こえる部屋で、ゆらゆらと揺れる炎を傍らに見ながら、好きな本を読んだり、音楽を聴いたりすることだ。」という人がおります。私は、そこで孫と一緒に遊べたら、なお最高と考える者ですが、それには、豊かな森が周囲にあることが条件となります。

先ほども申し上げましたように、現在内定とのことでありますが、平成28年の開催に向けて今後どのようなスケジュールで取り組まれるのか、また、県民の主体的参加による森林づくりを推進する観点から、開催機運の醸成に今後どのように取り組むのか、林務部長に伺います。

 

A(林務部長)  昨年10月には全庁を挙げた組織である「全国植樹祭長野県準備委員会」を設置し、現在、県民に向けての広報活動など準備を進めている。今後は、本年8月の国土緑化推進機構による平成28年の開催県の決定を受け、速やかに「全国植樹祭長野県実行委員会」を組織し、平成25年度中に開催の理念や開催場所、開催規模などの基本構想を策定する予定。この基本構想に基づき「基本計画」、植樹祭の運営方法など「実施計画」を順次策定し、万全の体制を整えて、平成28年春の開催を迎えたいと考えている。
全国植樹祭の開催を契機に、県民の主体的参加による森林づくりを進めることは重要であり、開催気運の醸成は、今後組織される「実行委員会」においても大きなテーマになるものと認識している。県としては、今後、県の植樹祭である「ふるさとの森づくり県民の集い」や、県内各地で開催される植樹祭等の緑化行事に、多くの県民がご参加いただけるよう取組むなど、開催気運の醸成に努めていく。また、あらゆる広報媒体を通じ広く県民の皆様に周知を図るとともに、市町村や関係機関、企業や団体の協力をいただきながら、子どもから高齢者まで幅広い多くの県民に参加いただける全国植樹祭になるよう取り組んで行く。

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◎ 信州山の日の制定について

Q 森林を育んでいる本県の山々は、あるところでは荒々しく雄大で、あるところではなだらかで優しくと、各々の地域で素晴らしい景観を作り出しております。のみならず、多種多様な動植物の生息の場所となっているだけでなく、豊かで清らかな水や空気を育み、山岳観光や山岳スポーツなど、県民生活と切っても切れない関係にあります。このことから考えても、改めて県民の皆様に山の大切さを広く認識していただく取り組みを行っても良いのではないかと考えます。

これまで県議会において、多くの議員から県の山の日を制定すべきとの提案がなされてきた経過があり、最近ではわが会派の佐々木議員から「信州山の日」の提案がなされております。

おりしも、昨年11月に松本市で開催された「岳都・松本(山岳フォーラム)2012」において、知事は山の日の制定に向けて積極的に取り組むとの発言をされたとお聞きいたしております。

私共も、山の日制定については知事のお考えに賛同するものであります。

このタイミングは、山岳そして森林の持つ機能の活用を盛り込んだ長野県総合5か年計画、そして森林づくり県民税の2期目が来年度から始まること、さらには、平成28年度の全国植樹祭の本県での開催が内定するなど、正に県の山の日を制定するに相応しい時期であると考えます。つきましては、本県山の日の制定に向け、今後どのように取り組まれるのか、知事に伺います。


A(知事)長野県にとっての「山」、これは様々な意味で貴重な財産。山岳観光の振興、山岳環境の保全、森林づくりの推進、様々な側面で、私たちがしっかりと「山」に向け思いを寄せ、関心を持ち続けなければならないと思う。また、山から様々な恵を頂いている。長野県のみならず日本全体、国際的にも重要な資源であると認識。こうした観点から、県民や長野県を訪れる人々が「山の恵」に感謝し、さらに活かしつつ、未来へ引き継いでいくという気運の醸成の機会、山岳遭難の防止や高山植物の保護、里山の整備などの様々な課題に対する意識を県民全体で共有し、しっかりと取り組んで行くための機会として、長野県独自の「山の日」を制定することが必要と認識。
この制定にあたっては、県が必要というだけでなく、大勢の県民皆様方が、長野県の「山」を誇りに思う気持ちを持つと共に、気運を盛り上げていただくことが大事。平成25年度には、県民を対象とした意識調査、県議会を始め、市町村、山岳、林業関係団体など、様々な方々に「山の日」の制定に関わっていただくための検討の場の設置などを通じ、でき得れば平成26年度の制定に向けて取組んでいく。

 

森林についての県民意識を高める絶好の機会ですので、更なるお取り組みをいただくよう要望します。

 

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◎文化財の保護について

Q 昨年9月定例会において、文化財の保存について地元の小菅神社を例にとり質問を行いました。今回も建造物に絞って保存・保護についてお伺いを致します。

前回も指摘したとおり、貴重な文化財はその多くが過疎地で高齢化の進んだ地域に多く存在しております。そしてその保存・保護の役割は、長い間地元の皆さんが労力とお金を出し合って担ってきました。

しかし、近年の高齢化・過疎化の一層の進展が、長く続いたこのシステムを崩壊させようとしております。長い時を経た建築物は一旦壊れてしまうとその復元は金銭的にも技術的にも非常に困難となります。

過去には、古いものを保存することはあまり意味のないことという考えがありました。また、国や県そして市町村においても財政に余裕がなくなると、真っ先に文化予算を削減することが当然の如くに行われてきたことも残念ながら事実であります。

9月定例会での、今後の文化財の保護の在り方についての質問に対し、「文化財を守り、活用することは地域を守り活性化することであり、地域にとってのみならず県にとっても重要。これまで以上に国・県・市町村・所有者及び地域の皆さんが連携・協力し、一体となって文化財を後世に継承していくことが重要。」とのお答えを山口教育長からいただいており、私どももこの考え方を了とするものであります。

小菅神社の保存に際しても県の担当者の皆さんが、本殿のある奥社まで足を運びご指導をいただいていることは有り難いことと評価を致します。しかし、地元にとってもう一つ重要なことは財政的な援助であります。この意味からも平成25年度予算案において文化財保存修理予算を増額して提案されたことは大いに評価するものであります。そして、この予算をより効果あるものとするためには、議決された暁には市町村の担当者そして所有者の皆さんに改正した制度の概要をしっかりと説明をすることと、国庫補助金を確保することであります。

今回は予算の増額とともに県の補助制度もかなり大幅に改正したとお聞きしておりますが、予算の内容と合わせ具体的に教育長にご説明を願います。


A(教育長)文化財補助金については、宮本議員をはじめ県議会や市町村などからも増額の要望をいただく中で、より公正な配分により、個人や集落など財政力の弱い所有者の負担を軽減して、国、県、市町村及び所有者が一体となって、文化財を安定的、持続的に維持、継承していくという視点で、制度の見直しを行った。
具体的には、国指定の文化財については、所有者の財政力に応じて、これまで5%で運用してきた補助率の上限を、7.5%に引き上げるなどの見直しをした。県指定の文化財については、要綱上1/2以内としつつも予算の状況により、実質的に毎年変動していた補助率を一定にして、所有者が計画的に事業を実施し易くするとともに、所有者の財政力に応じて上限を2/3に引き上げるなどの見直しをした。また、文化財を地域振興や観光振興にも活用していくことが重要と考え、国指定文化財の補助対象を史跡や名勝の整備等にも拡大した。なお、平成25年度予算額は、平成24年度の4,000万円から1.5倍の6,117万9千円に増額している。

 

Q 建造物文化財についてみると、長野県内には国宝が善光寺本堂や松本城天守など5件が、重要文化財が飯山市にある小菅神社本殿、駒ケ根市の光前寺弁天堂、諏訪市の諏訪大社上社本宮、下社春宮、秋宮など81件が指定されております。今回の予算によりこれらに対する助成が増額の対象となることは非常に喜ばしいことであります。ですがご存じのように、長野県内にある貴重な建造物文化財はこれだけではありません。

登録有形文化財は文化財保護法に定められた文化財登録制度に基づき、原簿に登録された有形文化財で、主に明治以降に建造・製作されたものです。この登録有形文化財が県内には420件もあります。皆さんが良くご存じのものとしては、松本深志高校の講堂はじめ管理・普通教室棟や飯田市立追手町小学校講堂・校舎等があります。これらの建物も先人の残していただいた大切な文化財であります。

今回の画期的な英断を更に進め、より効果あるものにするためには、登録有形文化財の保護・保存に対する助成も検討すべきと考えますが、教育長に伺います。


A(教育長)国宝や重要文化財といった国の指定制度は、重要なものを厳選し、許可などの強い規制と補助金などによる手厚い保護を行うのに対し、文化財の登録制度は、従来の指定制度を補完する、届け出制と指導・助言等を基本とした緩やかな保護措置を講じる仕組みとなっている。
したがって、国においては、管理等に関する技術的指導や修理とうにおける設計監理費の半額補助、固定資産税の減税等のほかには特段の助成制度は設けていない。県としては、このような国の登録に向け、市町村や所有者への支援を進めるとともに、先ずは、指定文化財の充実を図ってまいりたい。

 

Q 9月定例会において、小菅集落の景観は正に文化的景観にふさわしく、長野県におかれても飯山市と連携を取り、国への申し出に向けて検討を行うべきと提案を致しました。

この集落の家々の周りには「たね」と呼ばれている池が今も多くみられます。かつては、北信濃の豪雪地帯の農家の家の周りには、必ずと言ってよいほど「たね」がありました。

今では冬場に屋根に積もった雪を「たね」の中に投げ入れて雪を消すためにのみ使われておりますが、私が子供のころには洗濯などの洗い水に使用したり、春先に種もみの芽が出やすくするために「たね」に浸したりと、先人の生活に深く結びついておりました。

生活の変化や農作業の変化により「たね」の果たす役割は少なくなってきておりますが、それだけに、これからも長く残していきたい大切な文化的景観の一つと考えております。

重要文化的景観に選定を受けると景観の保存活用のために様々な事業を行うことができ、その経費に対し国からの助成を受けることができます。この選定を受け事業を実施することは、正にそれぞれの地域を守り活性化することにつながると考えますが、指定の効果についてどのようにお考えか、教育長に伺います。


A(教育長)「重要文化的景観」は、全国で34件が選定されている。本県からは、千曲市の「姨捨の棚田」が選定されている。3年前の2月に選定された。
重要文化的景観の選定にあたっては、地域を形作った人々の有形無形の営みそのものが重要な価値となることから、そういった価値を調査、評価していく必要があり、準備段階から研究者や行政担当者が地域の人々とともに活動していくことになる。そのため重要文化的景観には、選定後の施設整備等への補助や固定資産税の軽減といった財政措置による効果だけでなく、地域の人々が地域の伝統文化や先人の生活の知恵を再認識し、ふるさとへの誇りと元気を与え、農産物のブランド化や観光客の増加が期待されるなど、産業振興や地域づくり、人づくりにも大きな効果があると考えている。

 

Q 地域の宝である文化財の保護・保存は教育委員会が担当する範疇でありますが、教育委員会の要求を受け予算案を作成し議会に提案する権限は知事にあります。

知事には、この財源確保の厳しい折に良くぞ素晴らしい予算案を提案していただいたと申し上げさせていただきます。

私は先人から受け継いだ文化財を保護・保存し後世に伝えることは今を生きる私どもの責務であることは当然のことであり、今後とも各地の持っている素晴らしい伝統文化、そして、文化財を活用した地域づくりや観光客の誘致等を更に積極的に進めるべきと考えますが、如何でしょうか。知事にご所見を伺います。


A(知事)文化財関係の予算については、宮本議員から質問された小菅神社の話が頭の奥深く残っていた。地域の皆様方がこれまで取組んでこられた努力に、県としてもしっかり報いる必要があるのではないか、という思いも込めて、今回予算的対応をさせていただいた。
新しい中期総合計画においても、長野県のポテンシャルとして、先人が築いてきた努力の賜物として、伝統文化を受け継ぐ地域ということで、長野県がこれまで大切にしてきた地域の皆さんの誇り・絆、そういったものを守り、育てる精神的な支柱としての伝統文化の重要性を位置付けた。政策推進の基本方針の中でも「豊かさが実感できる暮らしの実現」のなかで、景観・自然・文化に囲まれた誇りある暮らしの実現ということで、今まで、ややもすると、質問にもあったが、文化の部分の対応についてはいささか弱かったのではないかと思っている。
観光との関係では、観光振興基本計画の中でも文化の活用を位置付けているので、伝統・文化を受け継いでいくとともに、観光面においても積極的に活用してまいりたい。

 そうした文化財を活用した取り組みが、農山村集落の機能の維持・再生につながると思いますので、ぜひ、積極的なお取り組みをお願い致します。

 

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◎ 公共交通政策について

Q 知事は、平成26年度末の北陸新幹線金沢延伸に伴い、JRから経営分離される長野以北並行在来線の県内分鉄道資産と車両について、35億円余りで譲り受けることでJRと合意し、これを全額長野県で補助することといたしました。地域の足として、鉄道網は無くてはならないものであり、存続のためには、県にとって巨額な財政支援もやむを得ないものと考えます。

今回の5か年計画においても、地域交通の確保を行うことを施策目標とし、公共交通機関の利用者数の目標を「利用者数の維持・向上」とし、鉄道の営業キロ数(県内の鉄道の総営業キロ数のことですが)の目標を「780.1km」としております。平成24年度が750.2kmですので、少なくとも廃線はさせず現在の路線は全て維持することが目標と思われます。また、県民の快適な暮らしを支えるため、鉄道を始めとした公共交通の確保に取り組むとしております。この計画も、是非とも達成が出来るように進めてほしいものと思います。

長野県ではJR東日本、JR東海及びJR西日本の3社が営業を行っております。路線としては飯山線、飯田線など8つの路線と新幹線があり、地域の皆様や県外などから信州を訪れる観光客の皆様の足としてなくてはならない存在となっております。

しかし、今やJRも民間会社であり、公共交通機関といえども経営の観点が重要視されていることと思います。国鉄時代には路線ごとに「営業係数」と言われる、100円稼ぐのにいくらかかるかを係数で表した数字が発表されていましたので、状況は理解できたのですが、現在は発表されておりません。たまたま週刊東洋経済の平成24年2月25日号に、東洋経済社が国土交通省からデータを入手して作成したJR全路線の収支が載っておりますので、そこから引用させていただきます。

 

これによりますと、飯山線の営業係数は651.4、飯田線は186.7、大糸線は867.8、信越線は267.2、及び中央西線は108.9などとなっております。因みに長野新幹線は96.6とのことであり、営業係数が100を切る、すなわち100円未満のお金を使い100円を稼ぐことはなかなか大変なことだと理解することができます。

しかし、単純に経営難等を理由に廃線、などと言うことになると、地域に与える影響は甚大なものがあることは、全国各地での実例からもお分かりのとおりです。JRの路線は県民のためにも、地域のためにも今後共絶対に維持すべきものと考えます。

長野県にとって、JR各社の経営する地方鉄道の果たす役割をどのように考えておられるのか、改めて知事にお伺いをいたします。


A(知事)これからの社会を考えた時、地域の足として鉄道交通の維持・確保は大変重要である。JR各社の地方鉄道は、通勤・通学・通院など住民の日常生活に欠かすことのできない交通手段であるとともに、また全国に繋がる交通網の一部として観光やビジネス面でも重要な役割を果たしている。全国的な鉄道ネットワークの一部を構成しており、地域にとって貴要な路線。
少子化・高齢化やモータリゼーションなどの進展に伴い、JR各社の経営する地方鉄道も厳しい状況にあると思われるが、公共性の強い企業ということで、地域の足の確保といったスタンスで経営を行ってもらいたい。私ども自治体としても、利便性向上や観光との連携などによる利用促進をJRに求めるだけでなく、我々自身も取組んで存続させていく努力が必要。

 

Q 昨年秋にJR東海から、飯田線の県内の有人駅12駅のうちの9駅の無人化の方針が地元の市と町に示されました。リニアモーターカーによる活性化をと意気込んでいた地元からは、利便や安全性について多くの不安の声が出されるなど、衝撃を与えております。

伊那谷を南北に結ぶ飯田線は、上伊那・下伊那を広域的に結ぶ唯一の公共交通機関であり、地域の通勤、通学、通院そして買い物など、住民生活の足であるとともに、人や物の交流を支えるネットワークとして、長きにわたり沿線地域の発展を支えており、沿線市町村、沿線地域の経済そして社会にとって、必要不可欠、またそれ以上にあることが前提となっているものであります。

伊那谷の多くの地域において、飯田線の駅周辺に商店街が形成され、街づくりや文化が根付き・発展してきました。また、南信州を訪れる観光客にとっては、信州の南の玄関口として重要な役割を果たしております。将来、リニア中央新幹線が開通した暁には、そのアクセス路線としても大いに期待されている路線であります。

これまでも、沿線自治体においては、厳しい財政状況の中、トイレや駐輪場などを備えた駅前公園の整備を行うなど、利用者の利便性の向上を図ること等を通じて、飯田線の利用促進に努めてまいりました。また、広域的な連携を図りながら観光列車の運行を行い、全国からJRを利用しての観光客の誘致を図っているところであります。

昨年9月中間連結決算において、過去最高の利益を上げたJR東海からの今回の提案に対しては、地元自治体としても簡単には承服できかねるものがあります。今よりももっと利用客を増やしたいというのなら、ダイヤの変更などについて地元自治体とも相談し協力を求めることが、JR東海が最初に行うべきことではないかと思います。

知事におかれては、昨年末にJR東海の山田社長と懇談し、地域の要求への対応を要請されたとお聞きしておりますが、どのような要請をされ、JR東海からはどのような回答がなされたのでしょうか。

そして、これを受け県においてはどのような対応を考えておられるのでしょうか。知事に伺います。


A(知事)昨年暮れのJR東海 山田社長来訪の折、私からは、飯田線の一気に9駅もの無人化は唐突であり、リニア新幹線の建設がこれから本格化していくが地域皆さんとの信頼関係、協力なくしては、リニア事業は円滑に推進できないのはないかと話した。充分な対話ときめ細かな対応を求めた。山田社長からは、利用者が減少している中、飯田線を維持するための経営努力の一環ではあるが、慎重・丁寧に対応していきたいとの話があった。
県では、地元とJR東海との調整を進め、先月には「飯田線利用促進連絡協議会」とJR東海との話し合いの場を設定した。駅無人化問題や飯田線の利便性向上・利用促進についての意見交換が行われ、その結果を踏まえ、沿線自治体では、4月からの駅体制の変更に向けて準備を進めているところ。利用促進協議会の今後も「飯田線の利用促進」に関するJR東海との意見交換の機会を持ちたいとの意向を酌んで、県としても引き続き調整役を担うなどして、地域と共に取組んでいく。

 

Q また、沿線自治体においては、財政状況の苦しい中自治体の費用負担で駅員の配置を行うなど、有人駅を維持し住民への負担を軽減するための、非常に苦しい選択を迫られております。

県も財政状況の厳しい中ではありますが、地元自治体の行う有人駅対策や活性化対策に対し財政援助を行うべきと考えますが、如何でしょうか。知事に伺います。


A(知事)現在、飯田線には、地元自治体が経費を負担している有人駅は存在しないが、飯田線を除く県内のJR各社に関して申せば、計76駅ある有人駅のうち、その4割、31駅において地元負担により駅員を配置している。これは様々な地域の実情を背景に、それぞれの自治体独自の判断に基づき、地域住民の利便性を確保するために行われている。
県の財政状況も厳しき折、支援をすることはなかなか困難。しかし、これまでも地域においては「元気づくり補助金」を活用して、イベント列車の運行や駅舎近隣への地元産の野菜販売施設の設置などが行われ、利用促進の取り組みが行われているので、今後も地方事務所も積極的にそういた取り組みに関わる中で、市町村と一緒に地域の駅・鉄道の活性化に取り組んで行く。

 

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◎ 豪雪対策について

Q 豪雪地帯特別対策法で指定されている特別豪雪地帯として、全国では202市町村(全国の約11%)が指定されております。これは、国土の約20%となる約7.5万k㎡で人口約338万人(日本の全人口の約2.6%)であります。長野県内においては北信地方の10の市町村が指定をされており、約7万人の人々が暮らしております。

特別豪雪地帯市町村は長野市を除くと人口減少と高齢化が他の地域より進んでおり、結果として財政力が弱い市町村です。自発的に住民を守るような制度設計をしたいのはやまやまですが、それが出来ないというのが現実で、10市町村のうち、長野市、白馬村及び高山村を除いた7つの市町村が過疎地域市町村にも指定されているということが、それを証明しております。

住民にとっても冬の生活は厳しく、今年にはいり、栄村で86歳の一人暮らしの方が、屋根から落ちてきたと思われる雪の下敷きになってお亡くなりになりました。また、飯山市においても、90歳の方が家庭用除雪機の下敷きとなり亡くなっております。毎年毎年発生する除雪作業中の事故の犠牲者のほとんどは高齢者で、雪国で暮らすことの厳しさをあらためて実感しております。市町村からは「除雪作業は二人で行うように」との注意を受けても、日中は年寄りしかいないという現実。

「少しでも若い者の手助けをしてやりたい」「自分がやらなければ家が、土蔵がつぶれてしまう。」高齢者のこのような気持ちを思うと誠にやりきれません。

雪国を終の棲家と定め日々の暮らしを送っている高齢者の皆さんも、春の訪れとともに野良へ出て農作業に勤しんだり、山の仕事に従事したりします。これらのことはささやかであるかもしれませんが、美しい農山村の風景を守ることに寄与しております。そして、自分がやらねばと言う義務感のうえに、愛情と手をかけ収穫した米や野菜などを食し、お医者にかかることも少なく、歳を重ねても自分のことは自分でしながら生活をされております。このように都会から見たらある意味うらやましい限りの雪国に住む高齢者の最大の悩みは、冬期間における住宅や土蔵の屋根、そして玄関と公道を結ぶ「けだし」の雪片付けであります。

豪雪地帯に住み、除雪の大変さについては身を持って承知している私は、同僚の議員と図り本会議や委員会において過去何度か雪害救助員制度について質問を行って来ました。要望してきた主なものとしては、雪害救助員の補助単価の引き上げと適用範囲の拡大であります。しかしこれまで残念ながら、切実な訴えに対し、私ども豪雪地帯に住む者にとっては非常に厳しい回答が長らく続きました。

ところが、本年2月6日「長野県特別豪雪地帯指定市町村議会協議会」の知事要望の際、冒頭、知事より雪害救助員の人件費の補助額の引き上げと適用範囲の拡充方針が示されました。

知事には一昨年の長野県北部地震以来、何度も栄村に足を運んでいただき、地震の被害とは別に豪雪地帯に住む住民にとっての「雪」がどのようなものか、その実態を膚でお感じになられたと思います。また、久保田危機管理部長には、本年1月8日に雪深い栄村にお出でになり、自ら民家の屋根に上がり、雪害救助員の作業状況をご覧になられたとお聞きしております。

これらのことが、今回の予算案に大きく反映されたのではないかと思っており、あわせて、感謝を申し上げます。

このことは、豪雪地帯に暮らす住民にとって大変嬉しい知らせであり、長年にわたり、県議会豪雪対策促進議員連盟 服部宏昭会長を先頭に粘り強く取組んできた大きな成果と考えます。雪害救助員派遣事業は、「人命を守る防災事業」と言う意味合いの強い事業であったと理解しておりましたが、今回は特別豪雪地帯で生活する「高齢者等の弱者の冬期間の生活を守る事業」という考え方を取り入れていただいたと考えており、これぞ住民本位の目線で組まれた予算と高く評価するものであります。

雪害救助員の人件費の増額と言うことが主に報道されておりますが、今回はそれとともに補助対象についてもかなり大幅に見直したと承知しております。予算の内容と合わせ見直しの内容も具体的に危機管理部長に伺います。


A(危機管理部長)「雪害救助員派遣事業」は、特別豪雪地帯で、積雪により住宅が倒壊する恐れがある高齢者世帯などに対して、市町村長が雪下ろしを行う人を派遣した経費に県が補助する制度で、昭和52年から36年間存続している。
この事業のあり方については、これまで県議会で多くの質問が行われ、県市長会、県町村会、特別豪雪地帯市町村から毎年要望が提出されてきた。これまでの経過を踏まえて今年度は、関係する市町村や社会福祉協議会、県建設業協会、県関係部局と地方事務所の担当者で構成する「雪対策のワーキンググループ」を設置し、雪害救助員派遣事業のあり方、除雪の広域応援のあり方、空き家の除雪対策のあり方など、豪雪地域における雪対策の課題と対応について、幅広く検討を行ってきた。
ワーキンググループでの検討を踏まえ、25年度予算編成において、雪害救助員派遣事業は特別豪雪地帯における雪による家屋の倒壊を防いで人命の安全を守る「防災事業」から、福祉施策としての観点を加えて「冬期の生活を保障するための事業」に考え方を拡大、転換し、地域の実情を踏まえて、よりきめ細やかに雪下ろしを支援する方向で見直しを行った。具体的には、平成6年度から据え置いてきた補助基準単価11,000円から13,000円に引き上げ、機械使用による除雪作業を補助対照とする。自宅玄関から生活道路までの間の除雪作業を補助対象とする。事業内容の変更にあわせ、事業名を「雪害救助員派遣事業」から「特別豪雪地帯住宅除雪支援事業」に変更する。予算額については、県財政が大変厳しい中にあって、補助基準単価の引き上げ、補助対象範囲の拡大により、前年度に比べ約30%増額となる627万2千円を提案させていただいた。

 

雪害救助員としてお願いをする人は、隣近所、知人のほかに、シルバー人材センターや建設会社等が考えられますが、多いのはシルバー人材センターのようです。

先日、「県内のシルバー会員が減少」と新聞報道でもありました。希望者に65歳までの雇用継続を企業に義務付ける改正高齢者雇用安定法が4月施行されることも一因のようですが、シルバー人材センター登録者の減少により、それ程遠くない先には雪害救助員の確保が難しくなるのではないかと危惧を致しております。

時間的余裕のある今から市町村とも相談をしながら、将来の懸念に備えるべきと考えますが、如何でしょうか。又、実際に屋根に上がられたご感想と併せて危機管理部長に伺います。


A(危機管理部長)人口減少や高齢化が進む豪雪地帯の雪下ろしの担い手の確保は大変重要な課題。ワーキンググループの検討の中では、屋根の雪下ろしは、転落の危険が伴い熟練した技術が求められるので、雪害救助員や建設業者が実施する。家の周囲や玄関から生活道路までの除雪は建設業者やボランティアが担当する。という役割分担が望ましいとされた。
除雪のマンパワーについては、各市町村のなかで確保できない場合にはより広域的な範囲で確保していく必要がある。県社会福祉協議会では、市町村社会福祉協議会と連携して、この冬からホームページで、除雪ボランティアの募集を行っていただいている。今回、ワーキンググループの検討の中で一定の方向性が出ていることから、まず第一歩として、各地域において、市町村、社会福祉協議会など関係者でさらに知恵を絞ってマンパワー確保の検討を深めていただきたい。県としても、その中から要望が出てくれば必要な対応をしていきたい。
栄村極野(にての)地区で、雪害救助員による雪下ろし作業を調査した感想について、実際屋根に登ってみて足がすくんだ。屋根の上で行う雪下ろし作業には、誤って転落する危険があり、熟練した技術が必要であること。積雪量が多い中、効率的に除雪作業を行うには、人力のみでなく除雪機械の活用をする必要があることなど、豪雪地帯の冬期間の生活確保にとって、雪下ろしがいかに切実で重要かということに認識を新たにし、今回の雪害救助員派遣事業の見直しの必要性を確信した。

今回の雪害救助員制度の強化・拡充案は、生活弱者への暖かな目配りでありますが、これだけで終わらせるのは些かもったいないのではないかと考えております。
雪が降る地域での生活は厳しく大変ではありますが、雪の無い地域にとっては望んでも絶対に実現不可能な天賦の宝物でもあります。

新年度予算において、地域・農山村の活性化や景観の保全・育成等のために、新規・継続をあわせ様々な事業を計上しております。

新規事業の「集落再熱実施モデル地区支援事業」、「地域発元気づくり支援金」、「信州の景観育成支援事業」及び「世界に誇る信州の農村景観育成事業」がこの範疇に入るものと理解しております。

これらの予算をより効果的なものとするために県庁と関係地方事務所が連携し、関係市町村・住民とも相談しこれらの事業を特別豪雪地帯市町村でも実施し、地域の保全そして素晴らしい景観の保存・育成に努めてほしいものと考えます。

知事におかれては、今後とも特別豪雪地帯に住む県民、特に生活弱者と位置付けられる方への目配りをさらに求めるとともに、本事業の実施に当たっては、既存の事業の組み合わせ等により、地域の活性化や観光客の誘致等にも今まで以上に積極的に取り組んでほしいものと考えますが、決意のほどを併せて知事に伺います。


A(知事)特別豪雪地帯は、雪国の厳しさと、それと表裏一体の美しさ、両面ある地域と考えている。今回雪害救助員の制度見直しを行ったが、長年ご要望いただいてきたものを危機管理部のほうでしっかりと受け止め、制度設計してもらった。地域の皆さんの思いをしっかり反映できるような県政に、これから益々していきたい。栄村にも何度も足を運んだ。信濃町等の豪雪地帯にも伺い、雪害救助員のみなさんと直接お話をする機会もあり、その中で強く感じたことは、他の地域とは全く違う支援をしていかなくてはならない部分がある。これからも、皆さんの思いに寄り添いながら対応していきたい。
その反面、宮本議員の質問にもあったが、この雪の多さというものは、とりわけ海外、雪の降らない地域の皆様からすると素晴らしい、大きな財産である。こうしたものをしっかり活かして、海外からの誘客、観光資源として活かしていく方策を考えたい。新幹線飯山駅もできる、飯山からアクセスできる地域の景観は日本の中でも有数の美しい景観にあふれた地域が多いことから、地元市町村と一緒に発信をしていきたい。県としても新しい中期計画のなかの様々なメニューのうち、豪雪地帯で活用できるものがあれば、活かしていきたい。

 

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◎ 教育問題について

Q 教育についてお伺いします。

かつて信州教育といわれ、全国から視察がきた程有名であり注目された長野県教育はいまや伝説となってしまったのでしょうか、昨今の県内に流れる教育に関するニュースに県民の多くは忸怩たる思いを抱いていることと思います。
県議会においても多くの議論があるように、学力、体力の向上、少子化など社会の変化に対応する施策、あるいは障害児、発達障害児などに対する特別支援教育のあり方など課題は尽きません。
これらの諸課題については、実態を正面から捉え、来年度を初年度とする第二次教育振興基本計画を基に、更なる工夫を頂き教員本来の力を前向きに発揮して頂くことを期待するところです。

しかし、私たちがそれ以上に気がかりなことは、学校現場で起こっている不祥事であります。
それは、生徒間でおきる「いじめ」、そして警察にお世話にならなければいけない「窃盗」「薬物」などの犯罪行為に留まらず、更に忌々(いまいま)しき、教員による生徒への猥褻行為など、本来の学校教育の取り組むべき課題以前の問題についてであります。

教育を受ける場所、教育環境がここまで悪化してしまったのか、と愕然たる思いになります。今年度は特に、長野県教育委員会は、本来あり得ない不祥事に翻弄された一年であったのではないでしょうか。

教科の内容を教える前に、とうとう学校の中の基礎的環境があるべき姿からかけ離れてしまっている、ということではないでしょうか。

あるいは現在の長野県の社会環境そのものの反映なのかもしれません。そうであったとしても、それを学校という教育施設の中で看過してよいのでしょうか。よいわけがありません。
学校の中の常識、道徳、倫理、規範、規律が大幅に崩れているか、失われていないか、まず点検し、反省をすべきではないでしょうか。
そこで、教育委員長に、長野県教育の現状をどう捉え、何をすべきか大局的な見地からの御所見を伺いたいと思います。


A(教育委員長)昨年度以来、一部の教員の不祥事やいじめ問題の深刻化等により、県教育委員会に対する県民の信頼が大きく損なわれている事態には、大変憂慮している。また、学校や教員に対する保護者や子どもの信頼が揺らぎ、日頃頑張っている大多数の教員も、元気をなくしているように見受けられる。
子ども達にとって学校が安心して学べる場となり、教員が輝きを取り戻し、保護者や子どもからの信頼を回復するためには、今まで以上に「学校を開いていくこと」が求められていると強く感じている。学校の様々な現状や取り組みを保護者や地域の方々に積極的に紹介することはもとより、保護者や地域の方々が学校に入り、教員や児童生徒の姿に触れ、学校活動を評価すると共に率直な意見を交わし、お互いに理解を深めることで、学校に風通しの良い風土が醸成され、学校と地域の方、保護者との間に信頼関係が保たれるのではないか。

教育は学校だけでなく家庭や地域を含む社会全体で支えていくもの、そして教員は学校の主役は子ども達であることを常に意識し、己を律し、情熱をもって日々の教育活動に臨む、このような環境を教育委員会として作ってまいりたい。

 

Q 不登校になった生徒やその関係者から、あるお話を伺う機会がありました。

毎日学校で掃除の時間がありますが、一生懸命掃除をやる子もいれば、サボって遊んでいる子もいます。そうした毎日が続いて、まじめに掃除をしていても褒められもしなければ、遊んでいる子が叱られもしない。バカバカしくなる。そして一生懸命やる子をあざ笑うような空気。

いじめられている子がいて、見るに見かねてその子を庇った子が今度はいじめの対象に変わり、不登校になった。そして、いじめているグループがどんな集団なのか、メールやネットの中に埋もれて、目には見えない。そして、今度その子を庇う子は現れない。

いじめがあったのか、なかったのか、誰が係わったのか、学校では把握していなかったのか、などと事件が起こるたびに話題になります。個々の事件においてこうしたやり取りが刑事事件として警察の捜査や事件の解明には必要なことでありますが、新聞や週刊誌的には注目を浴びても、教育的には浅はかな議論に過ぎないということに気づくべきです。

いじめや不登校の背景に、信賞必罰がない社会、すなわち機軸のない社会、あるいは秩序のない学校環境があるのではないか、そこに注目し、改善をすべきではないでしょうか。

正義とは何か、誠実とは何か、人間の誇りとはなにか、それらはどこにあるのか。恥を知るとはどういうことか。人はどのような時に感謝しなければならないか。卑怯な振る舞いとはどのようなものか。自由には責任が伴い、権利を主張すれば義務が生ずるのは何故か。どんな人間になりたいか、どのような人生を生きるか。約束するとはどういうことか、何を守らなくてはいけないのか。人の喜びと悲しみはどういう時に生まれるか、等々、語り尽くせないほどの多くの大切な教育の根幹があります。

学校とは、まさに人を育てる場でなくてはなりません。それが、知識や計算能力のような作業的な目先の能力向上に時間を奪われて、今の学校は、こうした「人を育て、人間性を涵養(かんよう)する」場所になっていないのではないかと懸念いたしております。

かつて、信州教育がもてはやされた時代は、学校の教育以前に一定の規範があったと思います。しかし、日本全体の社会も変わり、玉石混交(ぎょくせきこんこう)の情報が氾濫し、それらの情報のルートが多様化し、価値観も様変わりするなど、大きく社会環境が変化した現在、かつての幻想に捉われて現実を見失った信州教育の現状がここにあるのではないでしょうか。

新しい長野県教育振興基本計画の、基本目標の第一に「知・徳・体が調和し、社会的に自立した人間の形成」という目標がありますが、その重視する視点に「道徳」という言葉が見られません。施策の展開の中の「豊かな心と健やかな身体の育成」のところに、「家庭や地域と連携しつつ、社会奉仕活動や自然体験活動など様々な体験活動を活かした道徳教育を行います」とありますが、体験活動をすることよりも、もっと現実の中にするべき道徳教育があるのではないでしょうか。

日々の生活、学校、あるいは学級の中で生きた教材が埋もれていないか、毎日過ごす生活の中にこそ教員、教師の模範があり、指導力が試されているのではないか、と思います。

教育委員会におかれては、早急にこうした観点から、学校の環境改善を試みて頂きたいと思いますが、教育委員長に道徳教育の今後の取り組みの具体的方針や方法を伺います。


A(教育委員長)道徳教育の基盤は、日々の教育活動において、教員が子ども達を一人の人間として尊重し、一人ひとりを慈しむ心を持つことにあると考える。このような教員の姿が、子ども達に良い影響を及ぼし、子ども達は健やかに成長していくもの。また、教員が「してはいけないことしてはいけない」ときちんと善悪を指導することも重要なことと考える。このためは、教員自身が、常に人権感覚を磨く必要があり、同僚と子ども達について語り合う、自己研鑽に努めるなど、教師自身が学び続けることが大切と考えている。
道徳教育を充実させるためには、学校、家庭、地域が連携していくことが重要。特に家庭において、子どもたちの生活を整えていくことは大切。本県では、平成14年度より「共育」クローバープランとして、「本を読む、汗を流す、あいさつ・声がけをする、スィッチを切る」の4つを示し、大人も子どもたちと共に実践するように取組んできた。今後も、子ども達の豊な心をはぐくむために、家庭との連携を図ると共に、地域全体での取り組みを推進していく。

Q 東御市の事件、高校教頭の事件、特別支援学校の事件など、更なる不祥事によって、青少年健全育成条例のないことを誇りとしてきた長野県のモラルが、過去の幻想に過ぎなくなっているという現実が明らかになりました。子どもを性被害から守る条例がないという実体を、これ以上放置しておいてよいのでしょうか。

そして、氾濫する性的刺激の強い溢れる情報を、極めて無責任な表現の自由という名のもとに、子どもに対しても規制すべきでないという主張を繰り返し、子どもを守る視点を歪めてきた特定の言論など、こうした長野県の過去の対応を、県民が一緒になって振り返り、原点に返って話し合う時がきたと感じます。この件に対し、今後具体的にどのような解決策に向けて取り組んでいかれるか、知事にご所見を伺います。


A(知事)長野県では、青少年の健全な育成について、法規制等によるのではなく、住民運動や業界の自主規制など県民主体の取り組みを行ってきた。それによって一定の成果を上げてきた。
しかしながら、携帯電話やインターネットの普及など、子どもを取り巻く環境は大きく変わってきていること、また、本当に遺憾というか、悔しい、県内の公立学校において、平成24年3月から4月にかけ、東御市青少年健全育成条例違反により教師が逮捕され、その後もわいせつ事案が相次いで発生するなど、子どもの性被害について大変な懸念が生じているところ。

そのような状況の中、来年度については、法律や母子医療、インターネット等の各分野の専門家による「子どもを性被害から守る専門委員会」を立ち上げ、従来からの取り組みでは対応が困難な、子どもの性被害、及びそれらにつながる行為に対する効果的な対策について、子どもの育成に携わる団体や県民から意見を聴取するなど、県内における理解を図りながら、従来の県民主体の取り組みを尊重しつつも、法的な規制が必要な部分があるかどうか、慎重に検討してまいりたい。

Q さて、こうした信州教育の危機的状況下において、教育長がらみの人事案が昨日知事から上程されました。長野県の少なくとも戦後において、教育長を国の官僚に委ねたことは、過去一度もありません。

知事の過去の人事の経緯を見ますと、知事の目にはよほど長野県内に人材がいないと映っているのではないか、とも思えます。

今回の人事にあたり、長野県内からの人材登用についてお考えになられたことはないのか、あるいは、はじめから県外からとされたのか、お伺いしたいと思います。

また、教育委員会6名はバランスよく県内の教育行政を指導する立場にありますから、その委員の出自、背景をも考慮すべきと考えますが、学校教育現場の立場からその識見を反映できる委員が一人もいなくなるという状況について、知事はどのように考え、この人事を提案されたのか、お考えを伺います。


A(知事)新しい教育委員の選任について、県内に人材がいないと考えているわけではない。おそらく通常の時であれば、このような提案はしなかった。今回も様々な候補、どのような方が適切かと新吟した。
相次ぐ教員の不祥事への対応や、これから本格的に子ども達のために教育再生を進めていくためには、教育行政に精通した、マネジメント能力のある人材を必要とするということで、今回伊藤氏を提案した。

教育現場の立場の意見を反映できる委員がいなくなってしまうということだが、学校現場・学校の実態は充分把握していかなければならないということは当然と考えている。それには、ひとりだけ教員が入っていれば充分かといえば、全く当てはまらない。むしろ教育委員が現場へでる、教育委員会事務局もこの中に座っているだけではなく、学校現場に自らでかけていく、そういった努力をしていかなければ、単に教員の方が教育委員にいるから分かるというような生易しいものではないと思っている。そのようなとろで今回の人選をさせていただいた。

Q 知事は教育委員会制度改革について、過去何度か発言されています。昨年8月に立ち上げた「教員の資質向上・教育制度のあり方検討会議」の設立の趣旨のあいさつを議事録から引用しますと、「多くの子どもたちの居場所の問題であったり、様々な学校以外での悩みも含めてこれは教育委員会の権限と責任だけではない部分が実は様々であると思っています」、「責任と権限の不明確さという観点で言えば、県と市町村あるいは現場、文科省も含めたあり方というものが一つ大きな視点としてあると考えております」などです。

こうした改革について、今後具体的にどのように取り組もうとされているのか、また、それらの改革について、現在の教育委員会と意見を交換したことがおありでしょうか、知事に伺います。


A(知事)現在の教育制度は、様々課題があると考えている。教育委員会と首長との関係、義務教育については、県と市町村それぞれの教育委員会或いは首長との関係、その先に学校現場、校長・担任の権限や責任のあり方や仕組み、非常に複雑な体系になっている。
そのことが、公表の遅れであったり、対応の不適切さを招いている要因になっているのではないかと考えている。こうした問題意識は、他の知事や市町村長と話す機会があるが、教育についての制度的な課題というのは、私のみならず多くの方々が感じている。

国においてもこういった問題意識の中で、教育委員会制度の改革をしていこうとなっているわけだが、長野県においては「教員の資質向上・教育制度あり方検討会議」を設置して様々な議論をいただいてきている。今年度中に、具体的な提言が出されることになっており、その内容をしっかりと受け止め、教育委員会と一緒になって様々な取り組み、子ども達を中心においた教育制度の改革・教育の再生に取組んでいかなければならないと考えている。

教育委員会との意見交換については、これまで懇談会を3回実施してきた。その中でも今申し上げたようなこと、一連の事件との関係で、もう少し県教育委員会の方で把握ができるのではないかとか、県と市町村の関係について私なりの考え方を申し上げている。

Q 教育委員長に申し上げますが、私が聞きたかったのは道徳教育を、これから具体的に、どういう方針で、どういう風にやっていくのか、ということをお聞きしたかったんです。抽象的な話ではなく、こういうことをやっていきます、何でも良いと思うのです。こういう本を子どもに読ませるだとか、色々な具体的な方法を知りたいのです。また、お考えいただきたいと思います。

知事は、公式記者会見の質問に応じた発言で以下のように発言されています。 教育委員会の独立性について新聞記者の質問に答えた場面です。「要は、首長からの中立性ということはこれまで建前として言われてきたわけですけども、私から見ていると、逆に中央集権的な形が強く残ったんじゃないかと思っています。(途中を略します。)

色々なこと細かな通知を文部科学省が出すのは、これだけ多様な学校があって、現場の抱えている課題が様々ある中で、現場から遠く遠く、私でさえ不祥事の具体的な内容をつぶさに承知する状況にないなか、文部科学省にいけばなおさらの話ですから、そういうところで懇切丁寧に検討してもらうのは地方自治の立場からみれば、ある意味ありがた迷惑なところがある。もっと地方の自主性、自立性なども高めていく方向で、この教育のあり方というのは論じられるべきものと思っております」と、以上のような内容です。

教育の地方分権を主張しておられる知事が、その教育の行政的トップとなる教育長を 文部科学省から招くという、この意味を分かりやすくご説明いただきたいと思います。

知事は、「国、県、市町村の関係のあり方というところで本当に今の制度がよいのかということを是非考えていかなければいけないのではないか」とも発言されておりますから、私はこの人事に真っ向から異を唱えるものでもありませんが、更にお伺いしたいと思います。

知事の求める教育委員会改革について、知事のお考えに賛同されている方を、このたび選任されたと考えてよいのでしょうか、知事に伺います。


A(知事)私自身もかつて霞ヶ関の役人をしていた時代がある。その時も地方公共団体勤務も経験しているが、当然のことながら地方に出ると地方の皆さんと一緒になって地域を良くするために最善を尽くしてきたと考えている。仕組みとして中央集権的な色彩が強いと思うが、そのことと個々の人材とは切り離して考える必要がある。むしろ現場の実情について国に対して発信していく必要、パワーというものは国の役人には、かなりあると考えている。
今回、まさに長野県、教育再生待ったなし、という状況の中で、とりわけ教育の内容の話も重要ではあるが、それ以上に学校のマネジメント力、教育委員会事務局のマネジメント能力、ここが最も県民から期待されているもと、求められている部分だと思う。これから教育制度について、阿部政権になり宮本議員がお話のように、道徳の話も含め、教育委員会の話も含めてかなり突っ込んだ話が出てくると思う。そうした中で、教育行政というものに精通した人物は不可欠だと考える。長野県の職員となったからには、当然長野県のため、長野県の子どものために全力で働かせる、というのが私の強い思いである。

私の考え方に賛同していただけるかは、基本的には県の一員として同じ方向で取組んでいただく、そして開かれた学校づくり、信州教育の良き伝統というものは残していく。そういう中で改革をしていくことが重要と考える。

Q また、知事の人事案について、現教育委員会には、ご推薦の打診や、候補に関する情報、相談はあったのでしょうか、教育委員長に伺います。


A(教育委員長)道徳教育については、私は「心のノート」を復活させたいと考えている。
知事からは、今議会への提案にあたり、委員の候補者について相談があった。その際、私からは、信州教育の再生に熱き思いを持ち、学校や市町村教育委員会関係者と充分な意思疎通を図れる方が望ましいと伝えた。私も最初は、現場を良く知る人が望ましいと考えていたが、知事は本当に改革したいという熱い思いがある。それを知った上で納得をした。

 

Q 多くの不祥事が絶えない現状において、内部からの改革には見切りをつけて、外からの風を吹き込むとの意図ならば、それを全否定するものでもありません。しかし、重ねて申し上げますが、教員の現場を知らない方が占めているということに対して不安であります。そういうところに少なからず懸念材料としてこれからも持つということになります。重ねて申し上げますが、選任された方の個人的力量に異を唱えるものではありません。些か消化不良でありますが、次へまいります。

長らく教育界に身を置き、現場を知り尽くし、人生の全てを信州教育に捧げ、このたび退任される山口教育長に、教師としての思い出の一端や、後輩に言い伝えることがありましたら、ぜひお聞かせいただきたいと思います。


A(教育長)一連の不祥事が続いたなかで、教育行政の責任のある立場にありながら、議員ご指摘のような事を語る資格があるかどうか、大分悩んだが、後輩へのという一言において、教育に携る者、こうあって欲しいという気持ちの一端を述べさせていただく。
教員をどのように捉えるかということについては様々あるが、私は、「子どもは変わり得るもの」という風に捉える、それを職業にしているのが教員であると考えている。

子どもが変わるということは、言い換えれば成長という意味である。教員は、子どもの成長を信じ、子どもの成長に仕事の喜びを感ずる、これが職業として教員を選んだ者の一番の職業モラル、倫理というものと思っている。子どもが変わるというときに、大人はこういう形で子どもに迫りがちである。目の前にいる子どもを将来、このように育ってほしい、こういう風になってほしい、こうあってほしい、これは当然の思いであるが、それだけであるとおそらく子どもは潰れてしまう。と同時に、子どもというものは、今ある姿を子どもに携る大人たちに、そのまま引き受ける勇気があるか、引き受けるつもりがあるかどうかにかかっていると思っている。目の前にいる子どもを引き受ける、子どもが変わりうると、こうなって欲しい、この子にはこうなる力があると、この二つが一体のものとして捉えられる、その行為のなかに教育があると思っている。

日本の子ども達の最大の課題は、自分をなかなか肯定的に捉えることが出来ない、学校で勉強していることが将来設計と結びつけて考えられないことである。子ども達に自己肯定感、自分はここからスタートして良いのだ、自分の個性はこうだ、自分の姿はこうなんだ、というところを伴走者として大人が、親が、あるいは教員が子ども達との関係性を作っていないことにあるのではないか。

4年程前の新任者に辞令を交付したときに、5つのKをぜひ子どもと接するとき、意識して接して欲しいと話した。

5つのKとは、・子どもに感動を伝えているか、希望を語っているか ・子どものもっている、背負っている悲しみも苦しみも引き受けるつもりになっているか、・子どもの持つ柔軟な感性・子どもに志を育てようとしているか、・自己肯定感と他者への感謝を育てていけるか、これは、肯定感を育ててくれた方への感謝と背中合わせとなっているものであるから。・子どもとの間の絆は強まったか、強まったと子どもは感じているか、である。

この5つのKを示し、言葉の「あや」ではあるが「互恵」と。教師は子どもの成長に喜びを見出し、その中で自分も成長するものであると思っているので、この5Kと互恵をかけて各職場で成長して欲しいと話した。

教員の不祥事は、今述べたものとは対極にあるもので、おそらく教員になったときには、希望をもって仕事についたものと思うが、どういうところでそうなってしまったか、学校の組織としての在りようや教育行政に携わるものとして、教員の資質向上へのたゆまぬ研修、指導等、落ち度があったと言わざるを得ない。こういったものについては、あり方検討会議をベースに具体的な方策に繋げていかなければならないと改めて思った。

今年は、全国大会が長野県で多数開催された。高校についても、例えば、農業クラブでの生徒の活躍、ものづくり全国大会での生徒の活躍、技能五輪・アビリンピックにおいて現役の高校生が選手として参加する、高等部の生徒が金・銀・銅をとるというような活躍等、大変な活躍の背後には、それを指導した教員がいる。教員には、私ども教育行政のことから、一生懸命頑張っている教員には本当に申し訳なく思っている。

逆風の大変な中ではあるが、どうか踏ん張ってほしいし、そして議員の皆様方含めて、そういう教員の姿があればどうかエールを送っていただきたい。このような時間を与えていただき、本当に感謝申し上げる。ありがとうございました。

諸々のことで、気の休まる時がなかったと思いますが、大変のお疲れさまでございました。最後にひとつだけ申し上げます。

 

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◎ 県立4年制大学について

なかなか県立4年生制大学の学部・学科構成などの具体像が見えないことがあるせいか、県短教員の他の大学への転出がみられます。

平成22年度には1名、23年度にも1名、更に本年度は3名の教員が他の大学等に転出しているとのことであります。

その転出先も岩手医科大学、群馬大学、早稲田大学、明治大学などであり、今後設置される県立4年制大学において是非教育に当たっていただきたい大変優秀な若い教員の転出は誠に残念なことと思います。

このことは、現在、短期大学で勉学に励んでおります学生に対する教育水準の維持・確保のためにも、問題があると考えております。

また、教員の転出に伴う欠員は新規採用で補充するという訳には行かないことから、非常勤講師なりで凌ぐしか方法はないと思いますが、ここ数年は定年退職される教員も出てくることも考えますと、果たして大学設置基準を満たし続けることができるのかと言うことも非常に心配になります。

これらの点から考えても、一刻も早く結論を出していただくよう、知事に強く要望を致しまして、一切の代表質問を終わります。