平成30年2月26日

自由民主党県議団 宮本衡司

豪雪地帯の現状と課題について

Q まず今冬、全国各地を襲った豪雪により、大勢の方々が命を落とし、負傷者も例年になく多く、心よりお悔やみ、お見舞いを申し上げる。
本県においても一昨日、木島平村の方が屋根から転落しお亡くなりになり、これで6人の方が雪の犠牲となった。なお、このうち4人は飯山市内の高齢者で、何ともやりきれない思いだ。
それにしても、豪雪により車が渋滞し、動きが取れない方々を救助しようと、昼夜を分かたず除排雪作業を続けた自衛隊員はじめ関係各位に心より敬意を表するところ。
さて、福井県の国道の渋滞は解消に向かったが、市民生活の混乱はまだまだ続いているようで、本県からも2月14日から除雪車両やオペレーターが支援のため現地に派遣されたと伺ったが、その後の経過について建設部長に伺う。

A(建設部長)福井県からの応援要請を受け、除雪車及びダンプトラック合計14台とオペレーター19名を派遣し、2月17日の朝までの4日間で、県道の幅を拡げるための除雪を7路線42km、市道の徐排雪を住宅街など7地区において実施したところ。派遣にあたりご協力をいただいた長野県建設業協会や企業の皆様には、急な要請にも関わらず、短時間に除雪機械の手配を整えていただき、また、オペレーターの皆様には、慣れない道路での作業にも関わらず、安全で丁寧な除排雪を実施して頂いた。福井県知事や福井市長の他、福井市内在住の方からも直接お礼のメールが届くなど、感謝をいただいている。

 

Q 本県ではかねてより、冬季間の道路除排雪をはじめ雪害救助員に対する支援事業等も推進して頂いており、豪雪地の住民の生活負担の軽減がなされておることに感謝申し上げる。しかし一方で、年々過疎化と高齢化が一層進み、集落、地域の存続に関わる厳しい環境下におかれていることも事実。

一昔前には考えられなかった、70代、80代の皆さんが自ら屋根に上がり、危険な除雪作業を行うということが当たり前になってきた。あと10年、いや5年後には、後期高齢者となった雪害救助員が一人暮らしのお宅の雪片付けをする。まさに老々介護のような、こんな風景がいたる所で見受けられるような時代がやってくるのではと今から不安。
更に、雪害救助員の制度はあってもなり手がいなくなるという、極端すぎるかもわからないが、豪雪地帯においてはこのようなことに陥る可能性は十分ある。
ところで新年に入り、新潟県内で発行されている「妻有新聞(つまりしんぶん)」のなかで、非常に気になる記事を見た。
『除雪が出来なくなる、直訴 県建設業協会十日町支部 働き方改革が影響、市町に要望書』との見出しである。

記事を引用しますと、『これは政府の進める「働き方改革」に関する事柄で、除雪業務は早朝深夜に及ぶが、これが残業や休日出勤の上限規制など検討中の同改革の中でどう扱われるか不明な点が多いことから、除雪業務の実態に合った対応がいる。豪雪地帯から声を上げ、地域実情を考慮してほしいと求めた』とのこと。

『除排雪は、県から委託を受けた除雪路線を下請けに出したり、他事業所から人材を借りて除雪を行っているのが現状。これが労働者派遣法に抵触する可能性があるという。さらに除雪委託業務は、建設業許可28種に位置付けがなく、建設業に該当するか判断がつかないまま県が除雪委託しており、明確な取り決めがないまま不測の事故などがあった場合の建設業者の監督処分(許可取消・営業停止)が行われる危惧を同支部は持つ。』

さらに『働き方改革で夜中まで仕事し、交代要員も用意しろ、というのは担い手不足もありこの地域では難しく、では他から貸してくれというのは派遣法違反、となるという問題が出ている。豪雪地の実情を考慮してもらわなければならないと訴えた』という協会支部長のコメントが書かれている。

もしこのようなことが現実になったとすると、現在のような除雪体制が維持できないこととなり、住民にとっては非常に由々しき問題であるとともに、豪雪地帯にある中山間地域の存続そのものが危うくなり、自治体の過疎化に増々拍車をかけてしまうのではないかと懸念している。

先程、「10年後には後期高齢者の雪害救助員」と申し上げたが、除雪オペレーターについても同様であると考える。中小建設業者においては、夏場の本業そのものが不安定なため、昔のように通年雇用で夏場は建設作業に従事し、冬場は除雪作業をするという、従来からの体制は取れなくなってきていると聞く。熟練オペレーターの養成には、時間がかかる。道路状況だけでなく、民家や空き地等の状況を把握し、一人前に育てるには最低3シーズンかかるそうだ。担い手不足といわれて久しい建設業界だが、除雪オペレーターの確保については従来以上の対策を講じない限り難しいものと考える。

働き方改革の流れの中にあって、建設業・除雪作業の実態をどのように把握されておられるのか。更に、県におかれては除雪業務を今後どのように維持していくのか、建設部長に伺う。

A (建設部長)県管理道路については、通勤時間帯前を目途に除雪作業を完了することとしており、除雪オペレーターには、深夜、早朝からの出動に加え、大雪など気象状況によっては、長時間にわたる作業を実施していただいている。さらに、県北部を中心とした積雪量の多い地域では、幹線道路の拡幅除雪や市街地での運搬除排雪作業が中心となるなど、県民生活の確保のために、厳しい環境の中での作業に従事していただいていると認識している。
次に「除雪作業をどのように維持していくか」については、冬期間における道路交通を確保し、県民の日常生活や、物流、観光などの社会経済活動を維持するためには、道路除雪が極めて重要であると認識している。県では、除雪作業の継続的な担い手確保を図るため、企業の経営の安定化や労働環境の改善に向け、これまでも入札制度の見直しなどを行ってきた。具体的には、地域の実情に応じ複数企業で構成する「共同企業体方式」による契約や、道路の維持補修工事と除雪業務を一体化した契約の導入、さらに、適正な賃金を確保するため、入札時における「失格基準価格」の引き上げや、「待機保障費」、「雪道巡回費」などの計上に取り組んでいる。今後も、「地域を支える建設業検討会議」などの場で意見交換をしながら、県保有の除雪機械の計画的な更新や、GPS機器を活用した「除雪管理システム」の導入による事務処理の軽減など、除雪企業を支援する様々な取り組みを実施し、除雪作業の効率化に努めていく。

 

Q 現在、冬季間の道路除雪は、ほとんどが機械除雪で対応するようになっているが、機械除雪を補完するものとして、豪雪地帯では消雪パイプや無散水融雪道路が設置されており大いに効果を上げている。しかし、オペレーターの確保も今後困難な状況となる中で、消雪パイプや無散水融雪道路の更新や補修についても計画的に実施していく必要があると思うが、どのようにお考えか、建設部長に伺う。

A(建設部長)県内における消雪施設は127箇所で、延長が48kmあり、そのうち、散水消雪施設が約15km、無散水消雪施設が約33kmある。特に無散水消雪施設については、経年劣化の進行が早く、設置後15年から20年程度で抜本的な補修が必要になる事例が多くなっている。それぞれの施設について、毎年稼働状況を確認し、経年劣化による故障や機能低下の著しい施設については、順次更新を実施している。本年度も国道117号の飯山市伍位野地区など、4箇所で消雪パイプを更新しているほか、水漏れの補修なども適時実施している。今後も、冬期交通の安全確保のため、適切な更新・補修をしていく。

 

Q 毎年除雪でたまった雪は排雪しなければならない。そのために、千曲川に架かる綱切橋と中央橋の間の左岸にある河川敷に国土交通省千曲川河川事務所の許可を頂き、雪捨て場が開設される。この時期には、雪を満杯に積んだダンプカーや軽トラックによって、引きも切らず雪が運び込まれ、堤防と同じ高さに迫るほどの雪の山となる。また、搬入時間が一斉に重なるため、車両が数珠つなぎとなり交通に支障をきたすほどだ。この雪捨て場は飯山市のみならず、北信建設事務所も利用しており、県道と歩道からの雪も持ち込まれている。

これも冬の飯山の風物詩と言えば聞こえは良いが、市内の国・県・市・歩道にたまった雪、個人のお宅の屋根から下ろした雪等々、ありとあらゆる場所から河川敷に持ち込まれる。実は雪捨て場の確保は、除雪以上に自治体にとって頭の痛い問題となっている。雪には名前が書いていないので、それが何処から運ばれた雪であるかはわかりない。近隣の雪もあれば、10kmも離れた場所の雪もある。しかし、10キロも離れた雪捨て場へ雪を持ってゆくことは、極めて非効率的であり、交通渋滞の一つの原因ともなっている。

北信建設事務所では飯山市と相談のうえ、暫定的に昨シーズンから飯山市北部に位置する戸狩地区にある県管理河川、今井川の遊水地を雪捨て場として利用し、飯山市もこれに便乗していると聞く。このことは、現在の雪捨て場の交通渋滞の解消と作業の効率化等の面から歓迎されているが、容量が少ないことが誠に残念である。

今後は県が率先して、新たな千曲川河川敷雪捨て場を開設することが可能かどうか、飯山市と協力し、占有許可の手続き等もして頂ければと思うが、如何か。勿論、新たな雪捨て場の候補地が無償というわけにもいかず、現地には常に重機を待機させておく経費の予算等も必要となる。

このように本庁と現地機関、市町村が協力して豪雪地帯の暮らしを守る。是非とも早急に進めるべきと思うが如何か、建設部長に伺う。

A (建設部長)現在、飯山市における雪捨て場については、千曲川に架かる綱切橋上流の左岸河川敷の約21,300㎡に、飯山市が国土交通省から河川占用許可をいただき開設している。また、昨シーズンから、県が管理している一級河川今井川の遊水地、約1,300㎡を雪捨て場として利用しており、主に飯山市北部からの排雪を行っている。議員ご指摘のとおり、今井川の遊水地は容量が限られていることから、その近くの河川敷に新たな雪捨て場を確保できるよう、飯山市とともに検討している。今後、河川敷を管理している国土交通省への占用協議など、飯山市と協力して行っていく。
平成26年2月に県内で発生した大雪災害の事後検証を踏まえ、地域の除雪体制を連携強化するため、建設事務所ごとに設置した、国、県、市町村などで構成する「除雪連絡会議」のなかで、雪捨て場の情報共有、大雪災害時の相互除雪などに取り組んでいる。雪捨て場の確保については、建設事務所と市町村が連携して行っている。また、待機する機械の費用については、雪捨て場を管理している機関がそれぞれ予算措置して負担しているところ。引き続き、予算の確保も含め、県庁関係部局と現地の建設事務所ともに市町村と協力して取り組んでいく。

Q 除雪作業員たちは、その稼働・出動した時間だけ仕事をしているのではない。事前に担当道路をパトロールし、降雪状況を確認し、除雪を通勤・通学の時間までに必ず間に合わせる。そのためにオペレーターは、真夜中からその準備に取り掛かっている。そして、雪が降っても降らなくても、オペレーターの人件費や除雪車の維持管理・リース料等は確実に発生する。

平成28年全国建設業協会が、豪雪地帯を中心とする24道府県建設業協会及びその会員企業434社を対象に、除雪作業に関する実態調査をしたところ、人件費や機械の維持管理費の負担に加えて、降雪が少ない年は稼働率が低下することを理由に、半数以上が『赤字』と回答。そして7割が『5年後までには、除雪が続けられなくなる』と答えたとの事。

このような事が続けば、最悪、県が直営で除雪作業をしなければならない事態に直面するかもしれない。問題を解消するためには、作業内容に見合った労務単価の設定、安定雇用を図るための補償対応など労務費・賃金体系を改善し、さらには操作訓練・講習会等の実施や免許取得への補助など教育環境の整備を図ることが不可欠だ。豪雪地帯の住民の暮らしを守る除雪作業員の育成・確保対策を、より一層、具体的にお取組み頂くよう、強く求める。

豪雪地帯の経済環境は、雪を活用し、資源とするスキー場の出現により一変したが、それでも尚、雪は忌むべき存在であった。冬になれば男衆は現金を得るために半年間の出稼ぎに家を離れ、その間はお年寄り、そして母親と子供が父親の帰りを待つというのが、私たちが子どもの頃の農家の暮らしであった。こたつにあたりながら漬物を食べ、お茶を飲み、屋根に積もった雪を下しながら春の訪れをじっと待つ。このことは、かつては雪国の貧しさ・厳しさの表れであった。しかし、今では先人達の知恵が雪国の資源となっている。

野沢菜漬けは、野沢温泉村を訪れた内外のお客さまに、地域を代表する伝統的な食材として知られるようになり、大根や人参等は雪の下で貯蔵すると一層甘みが増すと、消費者に好評をいただいている。また、雪まつりやかまくらまつりのように、雪を利活用した各種イベントも毎年開催されるようになってきた。 雪国文化のすべてを語ることはできないが、先人達のささやかな生活の知恵により継承されてきた越冬技術等が、風物詩として評価される時代が来るような気がする。

雪国の集落に欠かせない「たね」の整備について、平成18年12月、26年2月定例会でも取り上げてきた。「たね」は地域の用水を利用して個人の住宅の敷地内に作られた池のことを言う。集落の中に縦横無尽に張り巡らせた水路で各戸の庭にある「たね」を結び、自然のエネルギーである水を活用した本当に良くできた消雪設備で、改めて先人の知恵に感服する次第。

飯山市北部や栄村の集落を回ると、雪国に生まれ育ったお年寄りには、雪が降ればじっとしていることができず、一日に何度でも雪かきに外に出る、という遺伝子が組み込まれているのではないかと思う程、高齢にも関わらず家の周りの雪を消すため、この「たね」に雪を投げ入れている光景をよく見る。しかし、このところ何十年と水路の修理は全くと言うほどなされていなかったことから、老朽化が顕著な状況。また、「たね」への水路は農業用水路なのか。そうであれば農政部の所管となるが、圃場と無関係な場所では道路側溝としての存在なので、建設部なのか、はたまた、福祉・環境の分野ではどうなのか等々が問題となる。

更に、水利権との調整も必要となるが、「たね」が整備されている地域は水資源の豊富なところでもあり、飯山市藤沢地区では、小水力発電への取組も始まり、積極的に水資源の活用が図られている。

知事におかれては、就任以来幾度となく冬の栄村に足を運ばれ、住民や雪害救助員の皆さんと直接お話をされるなど、豪雪地帯の厳しさをあらゆる機会に身をもって体験していただいている。「たね」の整備補修には、住民の暮らしを守るために部局横断的に組織をつくり、豪雪地帯の市町村とともに検討・研究を行う、このような時期に来ていると思う。

過去定例会において、「ほかの地域とは全く違う支援をしていかなければいけない部分があるというふうに感じている。」との答弁を知事よりいただいているが、豪雪地帯の住民の冬の暮らしは一段と厳しいものとなりつつある。

「他の地域とは程度の違った支援」ではなく「他の地域とは発想の違った支援」を、そして「今までの延長線上から生まれる支援」ではなく「新たな発想に立った支援」を、豪雪地帯市町村と連携して事に当たってほしいと願うものだが、「次期総合5ヵ年計画」や「第7次長野県総合雪対策計画」にどのように盛り込んでいただけるのか、知事に伺う。

A (知事)毎年のように、雪の関連で犠牲になる方が出てしまっている現状を重く受けとめなければならないと思っている。また、市町村議員、市町村長の皆さん、地元の県議会議員の皆さま方から、毎年のように豪雪地帯の課題、お伺いさせていただく中で、ほかの地域と違った取組、対応というものが必要だということは十分認識している。
まず、総合五ヶ年計画だが、今回地域計画を重視という形で取組んでいる。その結果、北信の地域計画は「雪とともに育む豊かな故郷 北信州」を目指す形となっている。雪とともに生きる豪雪地帯特有の発想で、重点的に取組むプロジェクトのすべてに雪の視点を取り入れている。こうした内容は、総合雪対策第7次計画にも反させていきたいと考えている。
例えば、今お話のあった地域特有の暮らしの知恵である「たね」については、下流域に水田があれば農業用水として行政として支援が可能であるが、そうでない場合は制度上の支援策がないというのが現状である。まさに、国の一律の支援制度で我々が足踏みしていると地域の皆さんの思いが実現できない、かなわない典型だというふうに思うので、地域振興局が中心となって、本庁でも部局横断で検討していきたいと思っている。
また、雪下ろしについてもこれまでは「命を守る」という観点で克雪住宅、雪害救助員(現住宅救助支援員)による支援、こうした制度を作ってきた。議員の質問の中にもあったように、救助員の方々自体が高齢化している、地域に担い手がいなくなってしまう懸念のある中で、抜本的にあり方を考えていかなければならない時期にきていると考えている。「命を守る」という観点からさらに拡げて、「地域の暮らしを支える」という視点で雪対策を総合的に考えていきたい。検討にあたっては、その担い手、人材をどう確保していくのか、建設業関連で様々制度的な課題もご指摘いただいたが、制度面の課題も含めてトータルで検討していきたいと考えている。市町村長、市町村の皆様方、実際に除雪に従事されている関係の皆様方にも十分意見をいただきながら、関係機関としっかり連携、協働を図ってこの雪対策を進めてまいりたい。