平成28年6月24日

自由民主党県議団 宮本衡司

 

最初に、4月の熊本を中心に九州各地で発生した地震により、お亡くなりになった方のご冥福をお祈り申し上げ、被害にあわれました方々に心よりのお見舞いを申し上げる。また、ここにきて豪雨による被害も甚大である。一日も早い復興を願うものである。

長野県地域防災計画について

Q 最近発生した地震でマグニチュード8.0以上の非常に大きな地震だけを見ても、平成23年3月東北地方太平洋沖地震(M9.0)、平成15年9月十勝沖地震(M8.0)、そして平成6年10月北海道東方沖地震(M8.2)と約20年の間に3回発生している。

この他にも私たちの記憶に残る大きな地震として、平成26年11月の長野県神城断層地震(M6.7)、東日本大震災の翌日に発生した長野県北部地震(M6.7)、平成19年7月新潟県中越沖地震(M6.7)、平成16年10月新潟県中越地震(M6.8)、そして平成7年1月には兵庫県南部地震(M7.3)と枚挙にいとまがない。

日本列島での自然災害、天災は地震だけではない。昨年9月の鬼怒川の氾濫、平成26年9月の御嶽山の噴火、更に、年々大型化している台風等々。

 

「天災は忘れた頃にやって来る」とよく言うが、これは物理学者で天文学者の寺田寅彦の言葉と言われており、「自然災害は,以前の被害を忘れたころに再び起こるものだ。何事も日ごろから油断することなく備えておかなければいけない」との諌めと言われている。

長野県内には糸魚川―静岡構造線、信濃川断層帯、伊那谷断層帯そして岐阜県内とはいえ木曽谷のすぐ西側の阿寺断層帯という活断層があり、急峻な地形の中を流れる千曲川、天竜川そして木曽川。浅間山、御嶽山そして横岳という活火山がある。

県歌信濃の国には「国の鎮め」そして「国の固め」と歌われているが、活断層と並び災害の発生の大きな要因でもある。

県の防災体制は、「長野県地域防災計画」に詳細に定められており、この計画は地域防災会議において毎年検討を加え、必要に応じて修正を行うこととされている。

これだけ膨大な計画に毎年検討を加えるということは、大変な作業になることと思うが、県民の命と暮らしを守るために、毎年、きちんと実施していただいていることは、大変ありがたいことである。

さて、この地域防災計画の、第1章総則中の第2節の防災の理念及び施策の概要の中では、被災者の事情から生ずる多様なニーズへの適切な対応が記述されている。

例えば「風水害対策編」、第3章「災害応急対策計画」、第12節「避難収容活動及び情報提供活動」において、市町村が実施する対策として「必要に応じたプライバシーの保護」、「男女のニーズの違い等への配慮」などについて定められている。

しかし、いったん災害が起き、避難所に集まって来られる住民は、赤ちゃんから高齢者まで、健常者・障がい者等々、様々な事情を抱えた方々がおられる。平時であれば気にならない事が、非常時には、周囲の無理解という形となって現れ、その家族は周囲に気を遣い、避難所暮らしは大変なストレスを抱えることになる。

そして、市町村が避難所の設置・運営を行うわけだが、その場合の課題として、理屈ではその方法がわかっていても、実際に経験のある職員がいないことが挙げられる。県内の人口5千人以下と言った町村にあっては、職員数も少なく経験者もいないということになり、より不安になる。

このことは、現実に熊本県で起きているが、県においては、予め予想されるこれらのことに対してどう対応されるお考えか。

A (危機管理部長)県では、災害時に市町村が円滑に避難所運営を行えるよう、平成24年3月にこれまでの教訓、たとえば女性や高齢者への配慮や、避難生活長期化への対応等を反映した「避難所マニュアル策定指針」を作成し、市町村に配布をして市町村によるマニュアル作成を促進しているところ。

また、避難所運営は、コミュニティの維持の観点からも地域のことをよく知る自主防災組織が中心となることが有効とされている。このため県では、自治会組織等の皆さんに対し、「避難所運営」で課題となる点を記載したカードを使い、条件付与しながら、住民が避難所運営を自ら考え課題を解決していく体験型・実践型の出前講座を実施しており、ここ数年は、年100回程度、5,000人程の方が参加いただいている。

さらに、職員が足りず、災害対応や避難所運営等に支障が生じ、市町村から県職員の派遣要請があった時は、でき得る限り要請に応えて参りますし、県だけでは対応できない場合には、全国知事会、関東・中部圏知事会、中央日本四県などの広域的な応援協定を活用してまいりたい。

避難所運営には、ボランティアやNPOにも関わってもらうことが重要であり、全国的なネットワーク組織である全国災害ボランティア支援団体ネットワーク、JVOADという組織にも本県の訓練に参加いただき、検討を開始したところである。

 

Q 次に、市町村が実施する計画として、「指定避難場所については、適切な規模を有し、想定される災害による影響が比較的少なく、救援物資等の輸送が比較的容易な場所にあるものを指定するものとする。」と定められている。しかし実際のところは、学校や保育園、地区の公民館や公会堂と言ったところが指定されているのが現実ではないか。

避難場所の指定は、比較的条件に合うところを指定したとしても、「指定場所における備蓄倉庫、貯水槽、井戸、仮設トイレ、マンホールトイレ、マット、簡易ベッド、非常用電源、衛星携帯電話等の通信機器のほか、空調、洋式トイレ等避難の実施に必要な施設・設備の整備に努め。」とされ更に「災害発生時に避難所となる公共施設については、段差解消やスロープの設置等要配慮者に配慮した施設整備を行うとともに、必要な物資の備蓄に努める。」とされている。

各施設にこれだけの多様な設備を備え、更新するとなると、毎年多額の費用がかさみ、整備が順調に進むとは考えられない。これらの計画が絵に描いたモチにならないように、今後全ての市町村に施設・設備の整備等をどの様に進めてもらうのか、そのためにどのような方策を講じるおつもりか。

A (危機管理部長)避難所における生活環境の維持や情報伝達等のための設備はいずれも生命に関わることであり、整備に万全を期すことが原則であるが、ご質問にもあったとおり、市町村の財政状況等様々な事情により、その整備水準が十分でない避難所がある。

県では、それらを補うため災害救助法に基づく「災害救助基金」の積み立てを行い、この基金の一部で、災害時に直ぐに活用できるように、食料を始めプライバシーウォール、簡易トイレ、段ボール製ベッド等の物資を事前に購入して、松本平広域公園内の備蓄倉庫等に備蓄している。

また、資機材等は、長野県建設機械リース業協会等の業界団体や企業と災害時応援協定を締結し、確保することとしているが、今後、熊本地震での検証を進める中で、県が締結している災害時応援協定の拡充や、新たな分野での協定の締結等を必要に応じ検討をしていく。

併せて、市町村が施設整備を積極的に進めていく上では、財源確保が重要であるので、国に対して、本年度までの期限となっている緊急防災・減災事業債の恒久化など県としても強く要請をしていく。

 

Q 報道によれば、熊本地震被災地では、4月17日時点で災害時派遣医療チーム(DMAT)157隊が活動中、80隊が移動中、さらに294隊が待機中とのことで、全国各地から駆けつけた多くの医療関係者によって、現地対応がなされたようだ。

平成17年9月定例会にて、私は前年発生した中越地震から1年ということで災害・医療体制について、当時の澤田衛生部長に質問をした。

 

その際、

『10月の23日の中越地震の後、私どもの県からは、県立5病院から8チーム、そして他の15の病院から医療チームを派遣した。

そして、その際に、県内の北信総合病院、そして相澤病院、信州大学病院には三つのDMATという災害援助医療チームが結成され、48時間以内に日本のどこへでも派遣できるようなスタイルをとっている。

ただ、それだけではなく、私どもは、県内の重立った病院にお願いをして、県として独自のDMATをつくろうということで応募したら、今、五つの病院から手が挙がってきている。

また、私どもは、48時間では遅過ぎるということで、8時間以内に県内のどこへでも送れるDMATを今2チーム県立病院の中で編成して送れる体制を整えている。

ただ、DMAT、DMATと聞こえはいいのだが、災害地域に入っていくというだけでは本来のDMATにならない。瓦れきの下に埋まって顔と手だけ出ている人に対して、その場所で医療を行うというためには、これは専門的な知識と特殊な技能が必要になる。

東京でトレーニングを行うシステムができ上がっているので、そういったところに積極的に派遣して万が一の災害に備えたいと考えている。』

と、答弁をいただいた。

 

あれから10年余が経ち、国内外の被災地へ派遣される医療チームをテレビで見ることも多くなり、世の中にDMATという言葉が広く認知されてきたように思う。

このDMATについては長野県地域防災計画第3章第7節の基本方針において、速やかな派遣を行うとされている。

県内のDMATの設置状況と大規模災害の発生時には、幾つ位の病院がDMATを被災地へ派遣できるのか。また、県内での大規模災害発生時の他都道府県の病院からの派遣受け入れについて、具体的にはどのような方法で派遣を求めていくお考えか。

A (健康福祉部長)本年4月現在で、県内には、災害拠点病院や救命救急センターを有する11病院に43チームのDMATが設置されている。

災害時には、DMAT設置の11病院すべてが被災地に派遣していただけると考えている。

また、県内で大規模災害が発生した場合には、「長野県災害対策本部」のもとに、健康福祉部長を本部長とする「長野県災害医療本部」を設置する。

この、災害医療本部に、県内のDMATの活動を統括する災害医療コーディネーターの医師にも入っていただき、国が定める「日本DMAT活動要領」や、県が定める「長野県災害医療活動指針」に基づき、被災状況等に応じて近隣県への直接の派遣要請や、厚生労働省を通じた全国レベルでの派遣要請を行うことにより、各都道府県のDMAT設置病院から派遣を受けることとなる。

Q 近年、DMAT以外に、日本医師会災害医療チーム「JMAT(ジェイマット)」、精神医療チーム「DPAT(ディーパット)」、リハビリチームの「JRAT(ジェイラット)」、栄養士のチーム「JDA-DAT(ジェイディーエーダット)」、ソーシャルワーカーの「DWAT(ディーワット)」等々、様々な災害対応チームが編成され、それぞれ、活動していただいているようだ。

今回の熊本地震においては、九州地区周辺のJRATを中心としたチームが、日本医師会災害医療チームの傘下に入り、避難所等における生活環境対策、生活不活発予防のための運動や作業活動の指導、そして補装具や福祉用品のチェック、手配等の活動を行っているとのことである。

JRATとは大規模災害リハビリテーション支援関連団体協議会のことで、東日本大震災の際に全国12のリハビリテーション関連団体で設立され、県内においても『長野JRAT』が設立されているが、熊本地震にチームを作り派遣するというところまでは到っていないようである。

 

5年前の栄村の地震では、リハビリ専門職種の法人として初めて(一社)長野県作業療法士会が村内に入り、避難所生活を余儀なくされている多くの村民に対し、平成23年3月22日から仮設住宅集会所が閉鎖するまでの2年間にわたり、支援活動を行った。

この活動は村より保健師業務を支援することが認められ、6か所の避難所巡回より開始し、仮設のデイサービス、冬季間の閉じこもりや二年目の仮設住宅生活での活動低下が心配されたため、集会所での「健康相談」が実施された。

また、個別的な傾聴・散歩・リラクゼーション、集団による軽体操・歌唱・ゲーム等を提供し、活動日数38日、会員動員数延べ65名により、延べ812名の避難生活をする村民と関わっていただいた。

 

近年の災害に際しては災害発生直後の対応のみならず、長引く避難所生活における質の向上と医療需要にも目を向けられるようになってきたことは喜ばしいことであるが、これらのチームがどのように連携していくのかが大きな課題であり。

県におかれては、日頃より『長野JRAT』を始めとする関係団体と積極的に関わることで、被災地活動が円滑に行われるよう、体制の整備を図ってほしいものと思うが如何か。

A (健康福祉部長)議員ご指摘のとおり、大規模災害時には様々な災害対応医療チームが被災地に入り支援を行っており、今回の熊本地震でも県内からJMATや日赤救護班、さらには精神面での医療を支援するDPATなどが派遣されている。

県においても、日頃から災害に対応する医療チームとの連携体制の整備が重要と考えており、県の地震総合防災訓練で行う災害医療本部運営訓練において、県内からJMATを派遣する県医師会や日赤救護班の調整を行う日本赤十字社長野県支部などに参加いただくなど、連携を図っている。

東日本大震災以降、様々な医療支援を行うチームが立ち上がってきているので、被災地支援活動における県内のJRATなどを始めとする様々なチームと県で派遣する医療救護班等との連携が図れるよう、日頃の防災訓練や情報交換の場に参加いただけるよう取り組んでいく。

 

Q 厚生労働省においても、「大規模災害における応急救助の指針について」という文書を各都道府県災害救助法の担当部局長に対し平成25年の4月に通知したと聞いている。

この中で、「時間の経過に対応し、適宜、口腔ケア、メンタルケア、いわゆる生活不活発病予防等の健康管理に必要な保健医療専門職等のスタッフを加える等、被災地の医療や保険の需要を踏まえた対応を実施すること。」として、一部を改めた。

また、先日の新聞報道によると、『連続震度7の熊本地震を受け、33道府県が地域防災計画を見直す方向。長野県も「見直し検討」』とあった。

見直しに当たっては、住宅の耐震強化、支援物資の円滑な配布などと同様に、避難所の運営に各種災害対応チームを取り入れるとともに、県内で大規模災害の発生した際には、適宜、生活不活発病予防等の健康管理に必要な保健医療専門職等のスタッフを配置してほしいものと思うが、如何か。

A (健康福祉部長)災害時における避難所での保健医療体制の確保は、一義的に市町村が担うこととなっている、県としては、市町村からの要請、または、必要に応じて、医療救護所や避難所に医師、看護師、歯科医師等の救護班を派遣することとしている。

近年の災害における経験を踏まえ、国においては、災害時の生活環境の変化等による健康被害に、より適切に対応するため、保健医療の専門職で構成される災害時健康危機管理支援チーム(DHEAT)を、都道府県及び指定都市単位で養成する取組を始めたところである。このような国の動きや、今回の熊本地震における、エコノミークラス症候群や感染症などの避難者の健康管理に関する課題を踏まえ、必要に応じて地域防災計画等を見直していきたいと考えている。

 

Q それぞれご答弁をいただいた。避難所においては、健医療専門職等の役割はますます重要となってくる。行政との連携、活動の温度差、経費の問題等があり、これらの課題解決に向け、更なる取組みをいただくようお願い申し上げる。

 

最後に、災害に関連して所感を述べさせて頂く。

5年前の長野県北部地震では、中条川上流の大規模な山腹崩壊による土砂災害など、栄村において甚大な被害が発生したことは記憶に新しいところであるが、県では、この中条川における山地災害の復旧に際して、震災直後から、林務部の治山と建設部の砂防とが、しっかりとした連携の下で対応いただき、復旧が着実に進んでいる。

また、復興に向けた住宅等の建設に際しては、必要な合板を大量に確保するため、県及び森林・林業関係団体の連携・協力の下、県産材の合板の確保に迅速に取り組んでいただき、速やかな復旧に大変役立った。

多くの皆様の御協力の下で災害を乗り越えてきた今、青々と木々が生い茂り、清らかな水が流れる県土のありがたさというものを大いに実感するものである。

 

先般は、長野県へ天皇皇后両陛下をお迎えし、第67回全国植樹祭が開催されるとともに、飯山市では第45回全国林業後継者大会も開催された。

当日までの、長い期間にわたりご準備いただいた、知事はじめ林務部・各種団体に心より御礼を申し上げる。また、行幸啓に際し両陛下の警衛・警備に昼夜を分かたず当たっていただきました県警察本部、所轄署の皆様に敬意と感謝を申し上げる。

これらの行事を通じ、県を挙げて、森林づくりの大切さとともに、長野県を森林県から林業県へと発展させ、そして、この豊かな森林を次世代へと確実に引き継いでいくという強い意志を全国に発信できたものと考えている。

未来へ向け、本県が本物の林業県へと発展し、豊かな森林が『山地災害の防止』をはじめ、地域の人々に多くの恵みをもたらし続けていけるよう、今後の県の取組に心から期待申し上げる。