平成27年12月2日

 自由民主党県議団 宮本衡司

◎地域医療体制について

Q 9月定例会において私は地域医療構想の策定についての質問をした。その際、市立大町総合病院の産科医の確保に関し、ご尽力をいただいた知事はじめ関係各位に敬意を表し、今後とも一層の医師不足対策にお取組みいただくよう要望した。

ところが、昨日の新聞報道にもあったが、私の地元の飯山赤十字病院において、来年4月から分娩の取り扱いを休止せざるを得ない状況になり、受診中の方々は転院を余儀なくされている旨、子育て世代の皆様方から不安の声が寄せられている。

県内の病院での産科医不足は深刻で、医師の疲弊による離職という最悪の事態にならぬよう、将来的には数名ずつ病院に集約せざるを得ないのではないかと危惧している。

長野県の地域医療構想は、前回の答弁では平成28年度中の策定を目指すとのことだが、地域医療構想を踏まえ、現在も維持が難しい県内の分娩体制を、将来的に県としてどのように臨むお考えか。

A(健康福祉部長)県では、現在、第6次県保健医療計画を策定し、地域の医療提供体制の構築を図っている。分娩を含む周産期医療についても、その中で重要な分野の一つとして位置づけ、正常な分娩を行う医療機関から、帝王切開などを行う地域周産期医療機能を持つ医療機関へ、さらにはハイリスク分娩を行うなどの総合周産期医療機能を持つ信州大学医学部付属病院や県立こども病院などへと、状況に応じた搬送や情報提供が行われるよう、連携体制の維持・構築について取組んでいる。
こうした周産期医療については、現在、目指すべき方向としては、正常分娩などに対し安全な医療を提供するための医療機関の連携や、周産期の救急対応が24時間可能な体制を維持することなどを掲げているところ。さらに将来的な県内の医療提供体制には、現在策定中の地域医療構想も踏まえ、平成30年度からの第7次保健医療計画の策定に向け、地域の広範な関係者の考えを十分伺いながら改めて検討していく所存。

Q 2次医療圏の中で分娩を扱う病院が一つしかない市立大町病院の事例と、圏域内の中野市内に分娩を取り扱う病院のある飯山赤十字病院の場合、地域住民にあたえる影響に差異があることは事実である。また、少子化の進行に伴い飯山赤十字病院での分娩件数は減少し、平成24年度からは年間100件を割り込むようになっており、かつ、このうち約4割が里帰り出産と思われる地元市町村以外の方の出産件数である。この様な現実を見た時には、それほどの影響は無いのではないかと言うご意見が出そうであるが、それは違う。

飯山市、木島平村、野沢温泉村そして栄村とも、名だたる豪雪地であり、過疎の地域である。人口減少に歯止めをかけるために、様々な努力を重ねているが、その矢先、出鼻をくじかれそうな分娩の取扱い休止という事態になって知った。

県におかれては、飯山赤十字病院、地元自治体と連携のうえ産科医確保の為にぜひお力添えをいただきたいものと考えるが、如何か。

A(健康福祉部長)全国的に産科医不足が深刻化している中で、長野県では平成23年度に設置した信州医師確保総合支援センターにおいて、即戦力医師の確保のため、県内医療機関への就業斡旋を行う「ドクターバンク事業」や、県内医療機関で一定期間従事することを貸与条件とする「医師研究資金貸与事業」などを実施している。
それに加え、10月に公表した『長野県人口定着たしかな暮らし実現総合戦略』では、「出産、子育ての安心向上」のため、県内医療機関で研修を行う産科医志望の研修医に研修資金を貸与し、研修終了後の県内医療機関への定着を促進するとともに、院内保育所の活用など勤務医の働く環境の整備による産科医確保のための包括的支援を行う事や、産科の体制を充実させるため産後ケアや院内助産所など、助産師や保健師の専門性を活かした取組みの支援を行う、など盛り込んだところ。
今後、信州大学をはじめ医療関係者等と協力し、幅広い観点から県内への産科医の確保策を充実すると共に、喫緊の課題として、飯山赤十字病院や地元市町村と連携を密にし、ドクターバンク事業や医師研究資金貸与事業を活用し産科医の確保に向けて力を注いていく所存。

Q 分娩の取扱い休止と共に心配なことは、小児科である。赤ちゃんがこの世の中に生を受けた途端に、産科医から小児科医にバトンタッチとなる。勿論、小児科医の仕事はこれだけに止まらず、地元の、かかりつけ医と協力して地域の子供たちの医療にも携わっていただいている。

更に、この地域は近隣の市町村と連携し、信越自然郷として観光の振興にも取り組んでいる。従来から、多くの都会の子供たちの受け入れを行っているが、そこで宿泊予約の際に先方から、緊急時の医療体制について尋ねられ、それが不安な場合、成約に至らない事があるとのこと。つまり、医師不足が地域の観光産業にまで影響を及ぼしている。

このような実情を理解いただき、飯山赤十字病院の医師確保の為の御努力を再度要望する。

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◎千曲川における鮭の遡上対策について

Q「カムバックサーモン」、千曲川のサケの遡上に取り組まれた方々には懐かしい言葉ではないかと思う。このキャンペーンは、名称を「千曲川サケ遡上作戦」として長野県が昭和55年から21年間、1億6千万円余をかけ、稚魚899万匹の放流を行った事業。この結果は誠に残念ながら、飯山の西大滝ダムで累計49匹のサケが確認されただけであった。

11月6日付の新潟県津南町にある妻有新聞1面に「ついに1200匹超え、水量決め手」と、宮中ダム魚道での遡上調査についての記事があった。しかし、残念ながら、同じ紙面で、「西大滝ダム、ようやく9匹」、「昨年上回る、水量わずか増加」とのことである。

直近では、宮中ダムで1,514匹、西大滝ダムでは11匹(+1匹 魚道外に出ていた)、更にこの1週間で上田市でも3匹確認された。

長野県が主導して行われたカムバックサーモンのキャンペーンをどの様に評価されておられるのか。

A(農政部長)県では、昭和54年度から平成11年度までの21年間、サケの稚魚のふ化・放流や千曲川の西大滝ダム魚道の改修、また、遡上サケの確認調査などの千曲川のサケ復活対策事業を実施した。このうち、サケの稚魚の放流については、昭和56年に発足した「千曲川サケの会」の協力のもと、北信地域の小学校で行われたサケ学習での稚魚放流を含め、事業期間中に899万5千尾の稚魚を放流し、その結果、西大滝ダムの魚道で49尾のサケの遡上を確認している。この事業は、児童たちに対しては、小さな生命を通じた情操教育の一端を担うとともに、県民の皆様に対しては河川環境保全意識の高揚にも一定の役割を果たしたものと認識している。
また、この事業を一つのきっかけとして、平成7年3月に当時の建設省が策定した信濃川水系水環境管理計画において、減水区間に対しての河川水量を増やす数値目標が盛り込まれるなど、その後の水環境改善への取組の契機となった事業でもあったと考えている。

 

Q 調べてみると、平成9年に河川法が改正され、「河川環境の維持」が重要な方針の一つにあげられたことから、千曲川を含む信濃川においても本格的な河川環境の回復が図られるようになった。そして平成13年7月に「信濃川中流域水環境改善検討協議会」において、断流、減水区間の根本的解消を図るため、東京電力とJR東日本の協力を得て、西大滝ダムと十日町市にある宮中ダムからの河川維持放流を始めた。

この放流は減水期である夏から秋にかけて毎年実施され、現在、西大滝ダムでは放流開始前に比べ75倍と言う大量の放流を継続的に行っているとのこと。この結果、サケの遡上数は次第に増加してきた。宮中ダムまでは間違いなく遡上しているサケがなぜ西大滝ダムまで到達しないのか、誠に残念なことであり、まずはこの理由を早急に解明してほしいものと強く願うもの。

長野県においては、これまで国が中心となって行ってきたモニタリング調査に追加して、今年の10月から11月に西大滝ダム下流域のサケの遡上調査を実施したと聞いているが、この調査の概要と結果、及び今後の見通しについて、河川管理者として建設部長に伺いたい。

A(建設部長)これまでのモニタリング調査では、3年前の遡上数と比べると、宮中ダムでは5倍に増え、今年度1514匹、一方、西大滝ダムでは10匹前後にとどまっている。こうした状況を踏まえ、県では、宮中ダムまで遡上したサケがどこへ行っているのかという視点で、目視や投網による捕獲調査と、宮中ダムで捕獲したサケに発信器をつけて、その後の行動を追跡する調査を実施した。その結果、県境で千曲川に合流する志久見川や、新潟県内で信濃川に合流する中津川などの支川への遡上を、確認している。今後は、今年度の調査結果を踏まえ、国、県、学識経験者などが構成メンバーとなっている信濃川中流域水環境改善検討協議会の中で、千曲川へのサケの遡上数が少ない原因の究明と、その対策の検討に取り組んでいく。

 

Q 「カムバックサーモン」キャンペーンが所期の効果を得られなかった理由の一つに「河川でのサケ捕獲が、海洋でのサケ資源を維持・増殖するために、原則、禁止されており、釣りを含めた漁業資源としての活用ができないことも背景にある。」と言われている。とは言え、当時とは時代が変わっている。水産漁業としての位置付けもさることながら、観光資源としての活用も考えられる。

サケの遡上は10月から12月と言われており、この時期に信州にお出でいただくお客さまに、これを活用した「サケの観察会」などのアウトドア観光商品を提供することもその一つではないかと考える。

その昔、千曲川には多くのサケが遡上してきた。父祖の見た風景を私たちの子や孫が見ることが出来るというロマン、遡上を通じての河川環境の更なる改善等、考えただけで夢が広がる。このように可能性を秘めているサケの遡上への取組について、是非、県として取組みを進めていただきたいと要望する。

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◎文化振興元年の取組みについて

Q 本年3月14日、新幹線が金沢まで延伸し、東京・北陸間の時間的距離は格段と近くなり、人的・文化的交流も期待される。

こうした中、飯山市の芸術文化活動の拠点として長年親しまれた市民会館が老朽化に伴い年内で閉館し、飯山駅前に建設中の文化交流館が、その機能を引き継ぐ。地域住民の文化活動はもとより、北陸新幹線開業を機に県内外との広域的な文化の交流や信州文化の発信に繋がることを期待している。

さて、知事は、本年2月定例会において、心の豊かを実感できる社会を実現するため、平成27年度を、「文化振興元年」と位置付け、新たに造成する「文化振興基金」を活用して文化芸術の継承・創造に力を注いでいく。このため「基金」を活用した新たな文化振興のための事業の充実や、「セイジ・オザワ 松本フェスティバル」など既存の文化事業の拡充等を通じ、本県の文化芸術を次のステージに引き上げるべく、積極的に取組を進めていくとされた。

そこでスタートから8か月が経過し、初年度の取り組みも進展する中、改めて「文化振興元年」にかける知事の思いについてお聞きし、併せて、今年度のこれまでの取り組みについて伺いたい。

A(知事)物の豊かさが一定程度達成され、これからは物の豊かさと合わせて心の豊かさが重視される、求められる世の中になってきていると考えている。このような中で文化芸術が果たしていく役割は大変重要なものがあると考えている。
平成27年度を「文化振興元年」と位置付けて、様々な取組を進めてきている。そのため、文化振興基金を様々な事業を積極的に展開・推進するという観点で創設し、「文化会館ネットワーク事業」や「アーティスト・イン・レジデンスin信州モデル事業」など新たな試みにも着手している。また、教育委員会においても、「文化財の活用による地域活力創出事業」や「伝統行事継承モデル事業」に取り組んでいただいている。今年から「セイジ・オザワ 松本フェスティバル」、「サイトウ・キネン・フェスティバル」が改称されているが、文化の信州ブランド、世界に発信していく観点、そしてまた、スクリーンコンサートの開催地の拡充等を踏まえて、県の負担金を増額したところである。また、10月31日には、オーストリアのウィーン楽友協会を訪問し、同協会と県民文化会館の長年の姉妹提携を踏まえて、さらなる友好交流を促進するという観点で覚書を締結した。
こうした様々な取組を通じて、本年度、長野県の文化振興にとって、大きな節目の年になったと考えている。文化芸術の新しいステージに向けて、大きな一歩を踏み出すことができたと考えている。県民文化部を創設して、文化政策課を置いている訳である。県民文化部、文化政策課の職員に頑張ってもらっているので、これからも引き続き、この文化芸術の振興を、県としてもしっかりと力を入れて取り組んでまいりたい。

 

Q 次に、「文化振興基金」の活用状況について、県民文化部長および教育長にそれぞれ伺う。「文化振興基金」を創設した際、「基金」を活用した新たな取組みとして、「文化施設の連携・強化」、「文化芸術の担い手育成」、「伝統文化の継承・活用」、「信州文化の発信・文化交流の促進」の4つの枠組みにより、この基金を活用していくとの説明があった。

かつて、文化財保護事業補助金制度も補助率の上限の引き上げ等、見直しを図っていただいた。国の重要文化的景観に選定された千曲市の姨捨の棚田や飯山市の小菅集落等にとっても大いに期待されるものであり、これらの枠組みの中で、新たな文化の創造と伝統文化の継承などの両面から、バランス良く文化振興に力を注いでいただきたいと思う。

そこで、今年度におけるこの基金の活用について、それぞれの枠組みの中、どのような事業を展開され、また、どのような事業効果を期待されているのか、併せて伺う。

A(県民文化部長)文化振興基金は、新たな文化振興事業を安定的・計画的に実施していくために創設したもので。今、お話にあったように4つの枠組みを設けているが、このうち「伝統文化の継承・活用」については、教育委員会のほうで所管しているので、残ります関連につきましてご説明させていただく。まず、「文化施設の連携・強化」については、県立の文化施設を核として地域の文化施設が連携し、音楽イベントなど地域ニーズに即した文化事業を展開する「信州文化会館ネットワーク事業」という形で進めており、地域のネットワーク強化をねらいとしているものである。また、「文化芸術の担い手育成」では、国内外から芸術家を招聘し、地域に滞在して地域住民と交流しながら創作活動をしていただく「アーティスト・イン・レジデンスin信州モデル事業」を大町市と協働で進めているところである。若手芸術家の創作・発表の場づくりや地域の活性化など文化芸術による地方創生に努めてまいりたい。
「信州文化の発信・文化交流の促進」については、「信州の山岳文化創生」事業として、山と渓谷社等と包括連携協定を締結し、10月に富山県と共催で、東京で文化シンポジウムを開催するなど、山岳文化による信州の魅力発信に努めてきた。今後も、来年2月には県民文化会館と姉妹提携しているウィーン楽友協会合唱団の長野公演なども予定している。これらの事業により、教育委員会所管の事業も含めて、文化振興 元年の初年度でございます今年度については、「文化振興基金」に計上した4千5百万円のほぼ全額を活用する見込みとなっている。

 


(教育長)県教育委員会では、今年度、文化振興基金を活用し2つの新規事業を実施し、「伝統文化の継承と活用」を進めている。1つ目の「文化財の活用による地域活力創出事業」は、これまで実施してきている文化財の保存・修理等への補助金に加えて、情報発信・活用の取組に対する補助金を新設し、文化財所有者等による文化財の公開・活用を促進している。2つ目の「地域で守る伝統行事(芸能)継承モデル事業」は、国・県指定の無形民俗文化財の宝庫である下伊那地域をモデルとし、民俗芸能の保存団体と行政が協働で、担い手人材確保などの取組を7月から始めたところであり、今後、銀座NAGANOでの民俗芸能の体感・学習会や、南信州民俗芸能応援団の立ち上げを予定している。これらの取組みにより、地域の誇りである有形・無形の文化財を後世に継承するとともに、保護だけではなく活用にも力を入れ、文化財を核とした地域振興につなげてまいりたいと考えている。

 

Q 文化芸術に関わる取組は、観光事業等と連携・連動させることにより、本県の魅力をより効果的に発信し、交流人口の増加などにつなげることが期待される。

2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控え、インバウンド観光の一層の推進が期待される中、グローバルな観点から、地域の文化芸術を捉えていく必要があるように思われる。また、文化芸術活動のすそ野を拡げ、県民が文化芸術を身近に感じ、触れる機会を増やすこと、地域で育まれ、受け継がれてきた伝統文化等を守り伝えていくことは、県民の心豊かな暮らしの実現に大いに資するものである。

物心両面で地域の活性化につながる文化事業、文化活動は、ある程度長期間にわたって安定的・継続的に展開し、地域に根差し、地域の文化ブランドとして発信できるものとなるよう、育んでいくことが望まれる。

11月19日付の新聞に2018年夏に県内で初めて開催される「全国高校総合文化祭」(全国高総文祭)の記事が載っていた。

『全国の高校生が長野県に集う大会の愛称は「2018信州総文祭」とし、大会テーマは県内の高校生と中学生から作品を募集し、「みすずかる信濃に若木は競い森を深める 山脈(やま)渡る風に種子(たね)を拡(ひろ)げて」に決まる。信濃の枕ことば「みすずかる」を冒頭に使い、参加する高校生を木々に、文化を森林に、文化の継承を風に、新たな文化の発信を種子にそれぞれ例えた』とのことである。

まさに、只今、新たな取組として答弁いただいた4つの枠組みにある「担い手育成」「伝統文化の継承」「信州文化の発信・文化交流の促進」などと繋がるテーマであり、次世代を担う高校生の思いを私は大変心強く感じた。

過疎と高齢化が急速に進む地方の活性化のために、文化芸術の果たす役割は大きく「地方を元気にするのは文化の力だ」とも言われている。地方創生に果たす文化芸術の役割の重要性をしっかり認識し、長野県全体の文化レベルの底上げを図り、文化振興の一層の推進に向け、「文化振興基金」の活用は大変有効と考える。

このために今後「文化振興基金」の拡充も視野に入れ検討すべきと思われるが、知事のご所見を伺いたい。

A(知事)宮本議員ご指摘のとおり、私も地方創生において文化芸術が果たす役割はきわめて大きなものがあると考えている。まずは、県民の皆様方が文化芸術を身近に親しみ、また地域に代々伝えられてきている伝統文化を誇りに思い、継承していく、こうした社会をつくっていくということが、これからの長野県の活力を維持し、品格のある地域をつくっていく上では大変重要だと考える。また、ご指摘あったように、インバウンドのお客様、総合戦略では宿泊者数倍増という目標を立てている訳である。日本の文化、そして長野県の文化を求めて多くのお客様にお越しいただく環境をつくるということも大変重要だと考えている。こうした観点で、平成28年度予算編成の検討を始めているが、長野県全体の文化芸術のさらなる振興のため、「文化振興元年」初年度の取組も検証しながら、文化振興基金を活用した事業の拡充も視野に入れて検討してまいりたいと考えている。

 

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◎子供を性被害から守るための条例の制定について

Q 11月5日に心の支援課から、「平成27年度インターネットについてのアンケート調査結果について」という資料が発表された。

この調査は児童生徒の学校の授業以外におけるインターネットの利用実態と保護者の意識を把握し、児童生徒への指導や保護者への啓発活動推進の参考に資するために実施したとのこと。調査対象機器は携帯電話、スマートフォン、メディアプレーヤー、ゲーム機、タブレットを含むパソコンとのこと。

調査結果の一部を申し上げると、

  • インターネットを利用できる機器の使用を開始した時期は小学校4年から6年生の割合が最も多い。
  • 機器の自宅以外の使用場所については、子どもの実態と保護者の認識に大きな差がある。
  • 多くの機能において、子どもたちは保護者の認識以上にインターネットの機能を利用している。等々。

多くの問題点がアンケートから浮かび上がっている。

このアンケートの結果をどの様に考え、今後の対策にどの様に利用していくお考えか。

A(県民文化部長)県教育委員会のアンケート調査結果からは、保護者の認識以上に子供達がスマホ等の情報通信機器を長時間使用していることや、保護者との約束事について、約束事はないと回答したのは子どもが保護者を大きく上回るなど、子どもたちの実態と保護者の認識に大きな差がある。
また、保護者の7割以上の方が保護者向けの学習会が必要だと思うというような回答も寄せられている。こうした調査結果を受け、県PTA連合会、県高等学校PTA連合会と県教育委員会では、去る11月26日に、大人が子どものインターネット利用の実態や子どもへの指導方法を知るとともに、学校、PTA、地域等が連携して、子どもと話し合いながらインターネットを利用できる機器の使用に関わるルールづくりの推進を呼び掛ける共同メッセージを発出したと承知をしている。また、これまでも保護者向けの学習会という面では、長野県青少年育成県民会議では、保護者等を対象にインターネットの適正利用を学ぶセイフネット講座を開催してきているが、平成26年度においては1万5千人の方、今年度は11月末現在で、7千人を超える方々が受講していただいている。

更に子ども達が危険を察知し、回避する力の育成も非常に重要ですので、県教育委員会においては、子どもの性被害防止教育キャラバン隊を高校等へ10月末までに75校に派遣していただく、このような取組を進めていただいている。これらに加え、今年10月には、学校、PTA、携帯電話事業者、販売店等、官民協働によりまして、青少年インターネット適正利用推進協議会を設置した。こうした課題については、常に時代に適応した見直しが必要であり、今後もこれらの皆様方とともに取り組みを検討してまいりたいと考えている。

 

Q 飯山市においても平成25年度に「児童・生徒の情報通信機器の使用に関するアンケート」が校長会により行われた。

傾向と課題として、

  • ゲーム機・携帯音楽プレーヤーは小・中学生の90%以上が持っている。
  • それを通じて「知らない相手とのやりとり」も日常的に行われている。
  • インターネットを通じてライン、ツイッター、フェイスブックなどへのアクセスを行い、チャット、メールなどを不特定多数の人と行っている例も少なくない。
  • 携帯電話からよりも、ゲーム機・携帯音楽プレーヤーからのライン、ツイッター、フェイスブック等へのアクセスが多い。このことは、親が知らない状況にあると思われる。

と言った事例があるとされています。

そして、「保護者の皆様へのお願い」として、

『子どもたちの携帯電話、インターネット、ゲーム機、携帯音楽プレーヤーの使用がこのような状況になっていることを十分に認識してください。インターネットで知り合った相手に呼び出され小・中学生が痛ましい犯罪に巻き込まれる事件が全国で多発しています。』等のお願いを記載し、子どもとのコミュニケーションを深め、インターネットの危険から守るよう呼びかけている。

この結果は「青少年育成補導センターだより」として、飯山市内の全戸に配付をされているが、このような取り組みは決して飯山市独自のものではなく、県内の多くの自治体でも実施されていることと思う。

このように、地域の取り組みが県民運動として子どもたちを危険から守ってきた、これは長野県が全国に誇れる素晴らしい活動であったのではないかと考えている。従来から長野県において行ってきた青少年健全育成の県民ぐるみの運動をどの様に評価し、しかしどのような問題があり、これからどの様に進めていくのか伺いたい。

A(県民文化部長)議員御指摘のとおり、本県の青少年健全育成の取組については、地域ぐるみの県民運動として取り組んできた。有害図書類の自動販売機の撤去など大きな成果を上げてきたものと認識している。このことは全国に誇りうるものと認識している。
しかしながら、大人のモラルの低下とか、インターネット、携帯電話等の情報通信機器等の飛躍的な発展・普及など、青少年を取り巻く環境は大きく変化してきており、これまでの県民運動は、青少年の有害環境排除の観点での取組がどちらかといえば主体であって、こうした社会環境の変化に、より的確に対応していく必要があるというふうに考えている。こうしたことから、先程申し上げたように、インターネットの適正利用を保護者等が学ぶセイフネット講座や大人の皆さん方が地域で子どもを見守る意味では、信州あいさつ運動の全県的な展開、更には、青少年育成県民会議の組織体制の強化とか、地域で青少年健全育成の実働部隊となっていただく青少年サポーターの募集等に努めてきた。今後も本県の青少年健全育成は県民運動が基本だというふうに認識している。関係団体の皆さんとしっかり連携を図りながら、県民運動の更なる充実に取り組んでまいりたい。

 

Q「被害者にならないように、こういうことに気をつけようね。」それだけで済むのなら、問題への対応は比較的容易なのかもしれない。

今年の3月に開催された第2回子どもを性被害から守るための条例のモデル検討会議に警察本部から提出された「平成25年・26年中における17事例説明資料」によると、児童の相手は20歳代から40歳代まで、県外・住居不詳が3名で残りの14名が県内となっている。説明資料を一件ずつ見た私は思わず考え込んでしまった。

LINEやチャットで知り合った相手に軽い気持ちで送信し、その結果、性交の求めを断り切れなくなったとか、相手が暴力団関係者であり応じてしまった、などと言うことだそうだ。

自らの意に沿わない性交渉は断固拒否する、という教育を子どもたちにすることは重要だが、果たしてどこまで現実的なことでしょうか。

子供や保護者に理解を求めるという予防的行為だけではなく、大人の側にも一定の規制を求めることが必要と考える。

知事は提案説明の中で、さらに県民と対話を行い、来年2月定例会までには条例に関する基本的な方針を取りまとめた上で、県議会で十分な議論が出来るよう取り組むと表明された。期限を定めることは、大変ではあるが必要なことと考える。

幾ら地域での活動や県民運動を活発化したとしても、特に悪意を持った人たちには届きにくいと言う限界がある。しかも子どもたちは未知の領域に対しては、興味と好奇心を持って積極的に踏み込んでいく

これは若者の特権でありこれを妨げることは慎重に行うべきであるが、こと今回の件については、保護者を始めとする周囲の人たちの認識以上にインターネットの機能を探り当て利用してしまうという現実があり、それが性被害にあう引き金となっている。

私は、信州の子どもたちを性被害から守るために条例を制定するという方向で取り組んでいただきたいと願う者の一人である。知事の決意を改めて伺う。

A(知事)まず、基本は性被害を受けることによって現実に精神的、肉体的に大きな痛手を負っている子ども達、或いは子どもの頃のそうした性被害で大人になってからも、悩んでいる方々がおられる、こういう現実に私達はまず正面から向き合わなければいけないだろうというふうに思っている。この専門委員会でのご議論、様々していただく中で、ご報告を受けて、できることはまずしっかりやっていこうということで取り組みをスタートさせた。子どもを性被害から守るための予防教育、或いは被害者支援そして県民運動の活性化、こうしたことをしっかりとして取り組んでいくことが重要だと思っている。
他方で、条例については長野県、いわゆる青少年保護育成条例を持たずにこの青少年の育成に取り組んできた県である。これまでこうした検討の場で条例、検討の俎上にのせてこなかった部分があるわけだが、私としては今日的な状況を考えれば、この条例についても排除することなく検討する必要があるだろうということで、これまで専門委員会の中のご意見、或いは県民会議の皆様方のご意見の中でも条例ということが出されてきている状況である。今後、私としてはこれまでも県民の皆様方と対話を行ってきたが、更に若者も含めて対話を行っていきたいと思っている。
今回の条例のモデルをベースとしつつ、どのような内容の条例であれば幅広い県民の皆様の御理解いただくことができるのか見極めていきたいと考えている。その上で、2月県議会定例会までには条例に関する基本的な方針を取りまとめてまいる考えである。